外は雨だったので、もういったん宿に入ったら出かけなかった。
部屋でテレビをつけると、昨日噴火した口永良部島のニュースをやっている。
夕食は萩の間で6時から。
萩の間は部屋から中庭を見ながら正面にある。
畳敷きにテーブルを置いた和洋折衷な部屋で、きりっとした和風美人の仲居さんが飲み物の注文を取りに来た。
山口県産地酒リストを見せてもらっても、獺祭を除き馴染みのない日本酒が並んでいる。
ちなみに食前酒として獺祭は既に卓上に置かれていた。
判らないときは聞く。
「どれがお勧めですか?」とパパ。
「・・・貴とか、雁木などいかがでしょう」
既に地元では脱獺祭が進んでいて、あまりにも獺祭が有名になってしまったのでむしろ獺祭以外の美味しいお酒というものが好まれているそうだ。
仲居さんが言うには、プレミア焼酎が流行って、脱焼酎になり、獺祭が流行って、今ちょうど脱獺祭になっているとのこと。
我が家が獺祭を知ったのは何年前だったかな。パパの部下で山口出身の人が時々送ってくれる山口名産セットの中に入っていて、あまりの美味しさにびっくりした。
その頃はネットで検索してもあんまり引っかからなかったのに、いつの間にかえらく有名なお酒になってしまった。
ちなみにその山口名産セットで毎回一番楽しみにしていたのは蒲鉾の白銀だったりする。ものっすごく美味しいのよ。
お酒は貴を頼み、空になったら雁木も頼んだ。
食べ物のおいしさを文で伝えるのは苦手なんだけれども、西京の食事は本当に美味しく、豪華で、しかも品が良かった。
特に印象に残っているのはサザエの刺身。
肉類も美味しいんだけど山口はやっぱり海の幸。
以前はもっと量が多かったんですよと仲居さんは言うが、とてもとても食べきれない量が出てきた。私には十二分。
窓の外の雨はさらに激しくなってきて、叩きつけるように紫陽花の葉を揺らしていた。