津和野が近づくに従って、空模様が怪しくなってきた。
今朝から時々雨がぱらついてはいたが、この頃は一番暗くなっていた。
ああやっぱりと思う頃に雨が降り始めた。
曇りのままもってくれれば良かったのに。
「津和野のどこに行けばいいの?」
うーんとね・・・持ってきたガイドブックは山口県のもので、島根県の津和野は萩ほどには詳しく載ってない。
「津和野の町中に入る前に太鼓谷稲成神社というところがあるの。まずそこへ行く」
「了解」
「あれっ? 津和野の近くの道の駅の温泉に寄りたいって言ってなかったっけ? あそこにそれがあるよ。寄っていくの?」
「うんそう。えっ、あれ?」
急に言われてパニックする。地図で見た時、寄る予定の道の駅 願成就温泉は萩から来るルート上じゃなかったはず。なんでここに? 私の勘違い?
「ああーっと違う違う、ここじゃない」
ようやく場所を把握する。入りそうになっていたのは別の道の駅だった。
さっきも書いたけど、山口県じゃなくて島根県側の道の駅が津和野の手前にあるんだ。名前もそのまんま道の駅津和野温泉。
「違うのね、じゃ出る」
パパは車をUターンさせた。
もしかしたら道の駅津和野温泉の温泉もすごーくいいところだったのかもしれない。
でもあまりに急だったから調べることも決断することできなかった。ちょっと後悔。
太鼓谷稲成神社は誘導する表示板などもしっかりしていて迷わず辿りつけた。
ちょうど津和野の町と津和野川を見下ろす中腹に建っている大きな稲荷神社で、京都の伏見稲荷ほどではないが千本鳥居で知られている。
「いなり」の文字は、ここは稲荷ではなく稲成を使う。
津和野藩七代藩主が津和野城の鬼門を守るために建てたとされ、今では日本五大稲荷のひとつに数えられている。