俵山温泉を出発してすぐに雨がぱらついてきた。
予定より早すぎ。
雨が降ると行動力が鈍る。車から見る景色も冴えない感じになるし、車の外に出るのは極力避けたくなる。
幸いなことに雨はすぐに上がったが、空模様は灰色。雲が厚い。
夏みかんの色をイメージしているとなっちゃんが教えてくれた山口の山の中のガードレールは黄色く、最初はなんでこんな色なんだろうと不思議に思った。
昨日夕方に通った油谷湾方面から俵山に向かう道よりも、俵山から長門湯本温泉に向かう道の方が心なしか整備されている。
あっ、町に来たと思うともう長門湯本で、単線の美弥線の線路を渡って音信川に沿って進むと橋のたもとに印象的な建物が建っていた。
大きくは無い。
むしろ小ぢんまりとした二階建ての瓦屋根の建物で、一階部分の破風が神社や共同浴場でよく見るカーブした唐破風造り。
そのあたりはいかにも温泉らしいのだが、もっと目を引くのは屋根に取り付けられたレトロな字体の電飾文字看板。
「湯本温泉」と書いてあって、湯本と温泉の間にかしいだ温泉マークが入っている。
なんていうんだろうな。チープともレトロとも取れる、千と千尋とか、台湾の九份にありそうなデザイン。
ここが長門湯本温泉の共同浴場の一つ、恩湯(おんとう)だった。
長門湯本温泉は住吉明神のお告げで発見された伝説を持つ。
すぐ隣に公営の無料駐車場があったのでそこに車を入れる。駐車場に面した旅館らしい建物の外壁に長門市ゆかりの童謡詩人金子みすゞのモザイク画っぽいものが飾られていた。