◆◇かみのやま・赤湯温泉外湯巡り◇◆
大人旅
観光マップに描かれた道路はかなり適当っぽかったが、この辺りかなと思ってきょろきょろ見回すと、それほど目立たないながら共同浴場の場所を記した看板があった。
それでも
新湯の共同浴場はわかりにくかった。曲がって曲がってふと右手を見たら、ちょっと引っ込んだところに入り口があった。
「ここだここ」
緑の暖簾が下がった狭い入口。
中に入ると思わずニヤニヤしてしまいたくなる絵にかいたような昔ながらの外湯。
蓋もない木の下駄箱。
入浴券の自販機。
神棚。
清掃当番表。
男湯と女湯の間には番台の小部屋がある。
ちょうど私のすぐ後から入ってきた人が、先に浴室内にいた人に「今日は早いじゃない」なんて声をかけている。
浴室は湯気もうもうだった。
湯船は円形。縁は御影石で底はタイル張りだ。その中に無色透明の湯が入っている。うん、多分透明。湯気がすごくてよくわからないけど。
掛け湯をしたら思ったよりずっと熱かった。
効くーと思うくらいに熱かった。
これは入るのに辛いものがあるかもしれないと思ったが、不思議と入るとすんなりと馴染む。少し入っていると慣れてそれほど熱く感じない。
湯口は三角形を逆向きにしたような変わった形をしていて、覗き込むと向こう側が見えそうだ。
この湯口からどぼどぼ出ているお湯はそのまま浴槽に入るのではなく、いったん小さな槽に貯められて、そこの下部から浴槽に入るようになっている。表面だけ熱くならないようにという工夫だろうか。
先に入っていた人たちはみんなもう上がって脱衣所でくつろいでいる。
防犯の目的もあるのか浴室と脱衣所を隔てるのはガラスで、脱衣所の様子もよくわかる。
湯船にいるのは私と私とほぼ同時に入っていらした地元の方だけになった。
地元の話題を振られて東京から来たと告げると、東京は物価が安くていいわねと言われた。
確かに衣料品は安いかもしれないけど今はインターネットでどこに住んでいても手に入るし、食べ物はこちらの方が安いんじゃないかと思うと答えた。少なくとも同じ値段を出せば筋の良いものが手に入るのではなかろうか。
雪の話にもなって、雪かきが大変そうだと話すと、屋根の雪下ろしにお金がかかってしょうがないと仰った。
そんなこんなでゆっくり話し込んでいたら、もう急ぐパパはとっくに上がって、下駄箱に彼の靴は残っていなかった。
まあ最初からそのつもりで、パパには上がり次第先に帰っていいよと伝えていたので構わない。
むしろ7ヶ所の外湯を全部回るつもりだった自分が1ヶ所にのんびりしすぎたかもしれないと焦りがわいてきた。
とにかく次へ移動しよう。
かみのやまの熱めのお湯で体はぽかぽかだ。