浴室に入れば鼻が曲がるほどのにおいがするかと思ったが、そうでもなかった。
少し重めな油臭で、いいにおいとは思わないがこれを臭いというなら自分比較でつなとり温泉の方が臭かった。もっと排泄物みたいなにおいがするのかと思っていた。
浴室は思ったより広く、全体的にミストで霞んで見える。
柱や壁がピンク色に塗られているのがB級感を促進させる。お風呂は二槽に分けられていて、手前は「ぬるめの湯」と書かれていた。鶯色というか、古茶みたいな緑濁のお湯が入っている。
腕と脚に少し掛け湯したところで、ふとさっきの露天風呂に先に行ってみようと思った。
ちょうど横にドアがある。これを開ければ・・・
あれ?開かない。ドアノブには真ん中にひねるタイプの鍵がついていたが、これがくるくる回るばかりで効かなくなっている。鍵が開かないからドアノブは石のように回らない。ちょ、なんだこれ、ブラフ? なんかの罠ですかい? 開かずの露天とは意表をついてくる。
と、そのとき!
腕と脚にまるで沢山の針でつつかれたような痛みが走った。チクチクチクチクチクチク。
腕や足に大量の虫が取りついていっせいに刺し始めたような異様な痛み。あまりの気持ち悪さに思わず悲鳴を上げそうになる。
見ると肌が赤くなっている。そこに触ると、まるでセメダインでもついているかのようなペタペタとくっつく感じがある。
そういえば腕と脚って、さっき掛け湯したところじゃないか。恐怖のあまり両腕を抱え込む。なんなんだ、このお湯はーッ。
・・・