部屋に戻るとパパがおせんべい買ってきてと言った。
なんでも小腹が空いたから駿河屋の向かいのせんべい屋で美味しそうなのをいくつか見繕ってきてくれということらしい。
でもどんなせんべいがいいか聞いても判らないので一緒に行こうよということになった。
小路を渡るだけなので、パパは駿河屋の玄関にある草履をはいて出たが、それを目にした駿河屋の若旦那が雪が積もっているし滑るから靴の方がいいと慌ててとんできた。いやいや大丈夫。行き先はすぐそこですから。
向かいのせんべい屋は寺子屋本舗と言って、京都に本店のある店だった。
ショーケースの中に様々な味付けをした正方形の大判せんべいが並んでいる。どれも美味しそう。
砂糖をまぶした甘いのと、黒胡椒のぴりっとしたのを私は選んだ。
パパは焼き鳥か串焼きみたいな、ぬれおかき甘口醤油を買った。これ、部屋に戻って食べたけど面白い食感。
おせんべいというよりお餅だね。
お店の人が硬くなる前に急いで食べてと言ったわけが判った。砂糖醤油を付けてちょっと表面のひび割れた焼き餅の微妙な硬さだ。