館内に入り狭い階段を下りていくと、突き当りに温泉の成分掲示表が貼ってあり、そこでさらに左右に数段の階段がついている。
右が男湯で、左が女湯。階段を回り込むように狭い脱衣所があって、ちょうど浴室は壁を挟んで男女対象に作られているようだ。
脱衣所も浴室も昭和中期を髣髴とさせるレトロぶりだったが、柄物のタイル張り浴室の雰囲気は悪くない。
壁に沿って扇形の浴槽は、確かに小さいが3人程度なら十分入れる。順番を待つほどではない。
えんぴつさんが四万とは違うにおいがすると言った。
確かにどこか甘いにおいはかなり四万とは違って、焦げているようなものが混じって感じられる。
僅かに濁った透明に近いお湯。
湯の花はいっぱいで、特に大きな茶色のものが沢山お湯の中を漂っている。
きしつく感触は四万とも似ている。
三人でいっぱいいっぱいの浴槽は、みんなで身を沈めると一気に床を洪水にした。ザバーン、ザバザバッ
。
黄色いケロリン桶が躍る。排水溝に渦が巻く。楽しい。
ところでお風呂の縁に飲泉用にとカラフルでチープなプラスチックのコップが二つ置いてあって、それが古くてB級っぽい施設のお約束のように幼稚園児向けのキャラクターが描かれていることはさておき、ここの源泉、飲むのは一休さんのとんちのように難しいよ。
だって湯口がお湯の表面とほぼ同じ高さなんだもの。どうやってコップにすくえばいい?
その答えは誰かが立ち上がればわかる。
さーっとその体積の分、湯船のお湯が減って湯口が表面に触れなくなる。これで味見ができるというもの。
出汁入りの薄い塩味。