やませみさんが手を入れて温度をみた。
四万のお湯は熱いところもあるが、露天風呂はほどほどに湯量を調節してあるので気持ちぬるめなくらいだったようだ。
この露天風呂、入るの楽しみだなぁ。
ぜひ真っ暗になる前に入りたい。
露天風呂の帰りはやっぱり雪の階段が難儀する。
露天風呂の一番風呂はやませみさんが入るらしいので、女性3人はやませみさんが上がったら入ろうと顔を見合わせた。
部屋に戻ってあやさんに中島屋のことを聞くと、行ったらもう店は閉まっていて、中をのぞいたら女将さんが気付いて招き入れてくれて、そのあと小枝子パパも外部での仕事を抜けて駆けつけてくれたんだそうだ。
私も四万に着いたら顔を出そうと思っていたんだけど、あやさんとパパに「もう仕事に戻ったよ」って教えてもらって断念した。ごめんなさいっ。
しばらく待っていると露天風呂が空いたようなので、三人であの狭い階段を下りた。手すりにも雪が積もっているし、足元も滑りそうで怖い。
でも露天風呂に入ることを思えば怖さもふっとぶ。
さっきより辺りは暗くなってきた。
雪はしんしんと降り続いていて、お風呂から見る景色は水墨画のようだ。
四万の温泉は端正で硬いという印象があるが、このもりまた旅館のお湯は硬さの中にほんわかとした和みがある。外気に冷やされたぬるめの温度がもたらす部分も多いかもしれないが。
肌触りはきしつきがある。
無色透明、湯の花も見えない。
どこか甘いにおいのする源泉には岩ではなく滑らかな直線でできた石の浴槽が似合う。
女三人でぺちゃくちゃしゃべりながら長風呂。
でも今回も一番先に上がったのはあやさん。
上がる頃には川べりの宿にもぽつりぽつりと橙色の灯りが灯りはじめた。
脱衣棚はお風呂の横に吹きさらしの状態であるのに、体は十分温まっていて、来るときのような寒さは感じなかった。