「男湯、みんな上がっちゃったみたいだよ」
気が付くと確かに衝立の向こうがシーンとしている。
まずいまずい、滝沢館にはもうひとつお風呂があるはずだ。急いでそっちも行ってみないと。
急いで移動した内湯はいったん館内に入ってロビーとは逆方向へ。
温泉旅館としてはそれほど広い浴室ではなく、湯口周辺に岩を組んであるほかは、家庭のお風呂にもありそうなタイル張りで特徴は無い。
露天風呂にも洗い場はあったが吹きさらしなので、宿泊したら髪を洗ったりするにはこっちかなという程度。
しかしお湯は水道水とは違う。
ほぼ透明だが僅かに茶色い湯の花。きしつきもあるがべたべたする感触の方が残る。
露天風呂とは違って非常に薄い感じがあるが、穏やかさがありこれはこれで良いかもしれない。
ちなみにこの内湯は井戸水に露天風呂と同じ源泉を少しだけ足して加熱循環している。
露天風呂のお湯がインパクトが強いので、両方入るならこちらを先に入った方が良かったかもしれない。
上がると男性陣はもう全員ロビー近くの囲炉裏のある休憩スペースで寛いでいた。
次の目的地は敷島温泉赤城の湯ふれあいの家。そして去年の夏に移転して、新天地で営業している川原湯温泉王湯・・・のはずだけど、えー、そんなところまで行くのは嫌だとパパ。あと一か所ぐらいならいいけど、そのあとはさっさと自分の車だけでも四万温泉に行って、宿にチェックインして、蕎麦屋の中島屋に行って焼酎の蕎麦湯割りを飲みたいと言い出す。
「だって王湯ってあそこだろ? 去年の夏、行ったじゃない」
そりゃあ私たちはそうだけどさ。みんなは行きたいだろうし。