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◇◆四万たむらの休日2◆◇

8.目的は河原の湯








四万温泉の共同浴場 河原の湯



 急ぎ足で私たちが向かったのは四万温泉の共同浴場 四万川と新湯川が合流する荻橋の袂にある石造りの河原の湯だ。
 ここは観光客でも無料で入らせてもらえる代わりに、朝の9時から午後3時までという時間制限がある。3時を過ぎると清掃時間となり、その後は施錠され、鍵を所有する地元の人たちのみが入浴する時間となる。

 私の今回の四万訪問にはもうひとつ目的があった。
 一郷一会という温泉好きの集まるグループがあるのだが、そこで作っている関東周辺100名湯プロジェクトというのがあって、100湯を決める際にまぐぞーさんと私が四万の御夢想の湯を押して、その責任から私が御夢想の湯のレポートを書いたものの、2005年12月に御夢想の湯がリニューアルしてからレベルダウンしたと100湯リスト落ちしてしまって、結果、代わりに入る温泉を決める際、日向見の中生館が候補に挙がる中、またまた強引に私が河原の湯を押した経緯もあり(長すぎる文章だ)、とにかく私が河原の湯のレポートを書かなくてはならなくなったのだが、あいにくとしばらく入っていなかった私には荷が重すぎて、今回ようやく再訪が叶うこととなったものだ。
 先々月にも万座の帰りに四万に立ち寄ってはいるが、中島屋で蕎麦を食べて時間切れとなり、念のため鞄にタオルは忍ばせておいたものの結局そのときは入ることができなかった。
 実はかなりプレッシャーだったのだ。
 レポートを書かなくちゃいけないってことじゃなくて、書くために何とかして河原の湯に入りに行かなくちゃいけないってことが。
 移動はいつも家族単位だし、何処へ行くにも私の希望だけが通るわけじゃないから。
 そんなに気楽でも身軽でもないのよ、実は。





 紅葉した蔦が屋根に絡まる河原の湯は、半円筒形をした独特の建物で、男女別ではあるものの脱衣所も狭く中も小さな浴槽がひとつあるだけだ。
 石垣を積み上げたような外壁のデザインは、浴室の壁にも使われている。ところどころに鳥や花のパネルがはめ込まれ、浴槽の縁は黒っぽい御影石でできている。

 ふわりと金属の臭いが漂った。
 錆びた金属ではなく、ぴかぴか光る金属面を研磨したときに臭うような感じの臭いだ。
 味見をしたくららさんが「スプーンを舌に乗せた時の味がする」と言った。巧いこと言うなぁ。それだ、それ。
 心持ち熱めだが、熱すぎることはない。石の浴室は湯気で熱されてサウナのようになっている。
 このお湯に逢いに四万まで来たのだと、そんな風に思った。
 冷えた指先までじんじんと温めて、ゆるゆるとまとわりつく。
 ふと隣のえんぴつさんを見ると、極楽の蓮の花の上でうたた寝でもしているかのような表情をしていた。








1-9四万温泉の冷静と情熱のあいだにへ続く


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