9.よろづやにお願い
ここで諦めるつもりはない。しばし考えた末、山ノ内町の観光課に電話をかけてやることにした。
携帯電話を取り出し持っていた地図に書かれた町役場の観光課をダイヤルする。
トゥルルルトゥルルル・・・
「はい、山ノ内町です」
「今日の湯けぶりウォークラリーに参加した者なのですが」
「えーと、私は留守番役の宿直なので・・・」
今日のイベントのために観光課が出払っているのは計算済みだが、そろそろ帰ってくる時間だろう・・・。
「あっ、ちょうど観光課の者が一人戻って参りました。電話を回しますので少々お待ち下さい」
「はいはい」
・・・しかし、待ち受けメロディーは途中でぶつりと切れてしまい、ツーツーと無情に鳴る受話器を睨みつける羽目になった。
おのれ転送しくじったな~。
ええい、もう一度掛けてやる。
我ながらしつこい。
でもこの機会を逃したら
湯田中大湯に入ることはできないだろう。
今度は別の人が出て、またまた内線に回された。今度は無事繋がる。
「はい、観光課です。え? 湯田中大湯に鍵がかかっている? 本当ですか?」
そうなんですよ~、はるばる歩いてきたのに。
観光課の人はちょっと間をおいてから答えた。
「大湯の隣によろづやという旅館があります。そこでウォークラリーに参加したことを伝えれば、鍵を開けてくれるはずです」