10.犬、入浴お断り
安代の温泉街はこぢんまりとしているので、
開花湯も近かった。これだけしか離れていないのに、
大湯と開花湯と二つ外湯があるだけで贅沢な気がする。
レナはパパと男湯に行くというので、カナだけ女湯についてきた。
ところが、
「トイレに行きたい」
うー、今頃言われても、外湯にトイレはついてないよ。
仕方ないので一度
安代館に戻ることにした。まあ大して離れていないからいいか。
トイレを済ませてからもう一度開花湯へ。
ここは大湯と比べて外観もごく質素だ。コンクリートのうちっぱなしに黒ずんだ木の壁で、遠くから見たとき共同浴場と言うより交番に見えた。
ここはまだお湯が半分しか入っていなかった。
私たちがついたとき、地元の人とおぼしき人が一人のぞいたが、「あら、まだお湯が溜まってないわ」と言って帰ってしまった。
幸い大湯よりずっとぬるかった。適温だ。
カナはパパに呼ばれて脱いだ服を再び着ると、男湯に行ってしまった。男湯も貸切状態だったらしい。