浴室前や脱衣所と比較すると浴室内は年季が入って見えた。
もしかしたらそれは、お湯の成分であちらこちら錆びのような土が固まったような赤茶色に染まっていることによってそう見えるだけかもしれない。
とにかくお湯の色はインパクトが強い。
泥を溶かしたような濃いオレンジ色。
しかも湯口から離れてお湯が滞っているあたりは泥の塊のような泡や、油膜のようなものが表面を覆っていて、これまた強烈な見た目だなとわくわくしてくる。
浴槽は大小二つ。
小さい方は寝湯となっていて溢れたお湯が流れ込む作り。
温度はちょうどいいくらいかな。熱すぎずぬるすぎず。
湯口の近くに行くと鉄のにおいが強い。湯口は間欠泉のように時々シューシューぼこぼこと唸っていて、湯口自体は水道の蛇口のように管が下を向いていて、ちょうどお湯の表面にぎりぎりつくかつかないかなんだけど、お湯が出ている時はお湯とともに炭酸が飛び散るように飛沫になっているのが横から見える。
ものすごい濁り湯なので中は見えないけど、透明だったらアワアワに見えるのかも。
あっ、またシュワー、ピシピシと飛び散っている。ツンと鼻に刺激が来る。
ちょっと味見してみると鉄、塩、にがりという感じ。
お湯の表面を覆っているのは鹿児島のTM牧場温泉で見たようなカルシウムの結晶。
厚みがあって硬いものと、羽衣みたいにごく薄く儚いものと二種類浮いている。
これをさくさくっと壊しながら入るのもまた楽しい。指ですりつぶしてみたり。
ここはお湯も印象的だけど建物もいい。力強く使い込まれた古びた感じに中に、モダンで洒落たところがある。
古い木造校舎をモノクロの写真でかっこよく撮りました的な。
これは一度は入りたい温泉かも。やませみさんは小赤沢に入っただけで秋山郷を語るべからず、小赤沢は秋山郷の入り口。本当の秋山郷は小赤沢から先って言っていた。
でもここに入っただけで満足しちゃいそう。やばいやばい。