「高速に乗るのは二本松IC? じゃ、また
岳温泉を通るよね。本当なら岳温泉の共同浴場だけでも入っていきたかったんだけど・・・」
「いいよ、一人でさっと入ってくるなら」
しかし共同浴場の営業時間は10時から。
今はまだ9時半。早すぎる。
もうどうしてこう予定が合わないんだろう。
共同浴場岳の湯は国道沿い。通りがかりにドアが開いているように見えたので、当たって砕けろ、車を降りてみた。
後ろからパパが「はるばる来た温泉マニアなんですけどって言えば入れてくれるかもしれないぞ」などと腹の立つ言葉を投げてきた。
「あのう・・・」
恐る恐る開いているドアから中に入ると、従業員のおばさまが宿泊者のシーツをまとめているところだった。
ここは共同浴場でありながら、宿泊施設でもある。食事は出ない。素泊まりオンリー。
「10時からよっ」
取り付くしまも無い。
すごすごとうなだれ、きびすを返した。