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那須の紅葉旅

24.轟く雷鳴



 大人はもう少し夜更かしすることにした。
 子供たちはドアのついた小部屋で寝ているから、こちらは電気を煌々とつけてテレビを見ていても大丈夫だ。
 パパがフジテレビのプレミアム・ステージにチャンネルを回した。今日の映画は「踊る大走査線ザ・ムービー レインボーブリッジを封鎖せよ」だ。
 「これ、何時に終わるの?」
 「判らない」
 ・・・。
 大人も今朝は4時半起きだって言うのに、大丈夫かな。
 明日本当に稲刈りする体力残ってるだろうか。

 結局最後まで映画は見てしまい、それからお風呂に行くことにした。
 もう12時だ。
 「お風呂に行くから付き合って」
 「いやだよ、行きたいなら一人で行ってくれば?」
 あの昼でもちょっと怖そうな階段を一人で下りて真夜中の風呂に行くのかい!?
 「絶対嫌だっ」
 「わがままだなぁ」
 だって怖いものは怖い。それにこんなに冷えてるんだから、寝る前には温泉に入りたい。
 しぶしぶパパも立ち上がった。
 二人で静まり返った廊下を歩きながら、低い声で話をする。
 「夜中のお風呂は誰もいないかなぁ」
 「・・・いや、さっき若い夫婦を見かけたから、ちょうど向こうも踊る大走査線を見ていて今頃お風呂にいるんじゃないの?」
 「まっさかぁ」
 本当だった。
 浴室にはちょうどこれから入ろうとする女性が一人いた。
 どうもここのお風呂に入るのは初めてらしく、これ、二つあるけど温度が違うんですか?と聞いてくる。
 「昼間は左の方が熱かったですよ」
 「あっ、本当だ」
 「今まで映画見ていたらこんなに遅くなっちゃって」
 「もしかして踊る大走査線?」
 ビンゴ!
 まったくパパの言ったとおりだったので可笑しくなってしまった。


雲海閣の廊下には、ちょっと洒落た飾り付けなどある 温度計のこのレトロ感もまた捨てがたい


 二人で静かに入っていると、いきなり正面の窓ガラスが眩しく光った。それから何か車の通るような音がする。
 「窓の外、どこに通じているんですか?」とその女性。
 「那須街道に面しているみたいですよ。今の光、何でしょう、まさか雷?」
 「車じゃないかしら・・・」
 また光った。続いてやはり車の通るような音がする。
 磨りガラスの窓を少し開けてみた。
 暗いのでよく見えないが、雨は降っていないようだ。光は車のヘッドライトにも思えるが、こんな真夜中にそんなに車が通るだろうか・・・。
 「やっぱり車なのかなぁ」
 と、そのとき
 三度目の光が薄暗い浴室を一瞬明るく照らした後、がらがらがらっという耳を劈くような轟音が鳴り響いた。
 吃驚したぁ。
 か、かみなりだ。
 やっぱりあれ、雷だったんだ。
 そして一呼吸する間に今度は凄まじい勢いで雨が降ってきた。

 パパが待っているといけないと思い、早々に上がったが、脱衣所から出る前に、ゆっくり入っていると言っていた彼女も上がってきた。
 「何だか怖くなっちゃって」
 だよねぇ。
 雷に大雨。屋内とはいえ、真夜中に一人でお風呂に入っているのはきつい。
 脱衣所から出ると、もう階段の下でパパが待っていた。
 雷はひっきりなしに大音響を轟かせているし、雨音も尋常じゃない。
 一人でお風呂に行かないで良かった。

 長い長い階段を登り終えて白い通路を抜けて、部屋の前まで来たところで廊下にある窓から外を眺めてみた。
 窓の桟の所に大きな丸い氷の粒が沢山落ちていた。
 雨じゃなくて雹が降っているんだ。
 どうりでものすごい音がすると思った。
 パパは最初、気に入った宿が取れなかったらキャンプ場でもいいか、なんて言っていたけど、旅館にして本当に良かった。
 もしテントなんて張っていたら穴だらけになっていたかもしれない。


凄い音がすると思ったら雨ではなく、大粒の雹だった




2-1.九尾の狐伝説と殺生石へ続く


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