雲海閣の廊下には、ちょっと洒落た飾り付けなどある
温度計のこのレトロ感もまた捨てがたい
二人で静かに入っていると、いきなり正面の窓ガラスが眩しく光った。それから何か車の通るような音がする。 「窓の外、どこに通じているんですか?」とその女性。 「那須街道に面しているみたいですよ。今の光、何でしょう、まさか雷?」 「車じゃないかしら・・・」 また光った。続いてやはり車の通るような音がする。 磨りガラスの窓を少し開けてみた。 暗いのでよく見えないが、雨は降っていないようだ。光は車のヘッドライトにも思えるが、こんな真夜中にそんなに車が通るだろうか・・・。 「やっぱり車なのかなぁ」 と、そのとき 三度目の光が薄暗い浴室を一瞬明るく照らした後、がらがらがらっという耳を劈くような轟音が鳴り響いた。 吃驚したぁ。 か、かみなりだ。 やっぱりあれ、雷だったんだ。 そして一呼吸する間に今度は凄まじい勢いで雨が降ってきた。
パパが待っているといけないと思い、早々に上がったが、脱衣所から出る前に、ゆっくり入っていると言っていた彼女も上がってきた。 「何だか怖くなっちゃって」 だよねぇ。 雷に大雨。屋内とはいえ、真夜中に一人でお風呂に入っているのはきつい。 脱衣所から出ると、もう階段の下でパパが待っていた。 雷はひっきりなしに大音響を轟かせているし、雨音も尋常じゃない。 一人でお風呂に行かないで良かった。
長い長い階段を登り終えて白い通路を抜けて、部屋の前まで来たところで廊下にある窓から外を眺めてみた。 窓の桟の所に大きな丸い氷の粒が沢山落ちていた。 雨じゃなくて雹が降っているんだ。 どうりでものすごい音がすると思った。 パパは最初、気に入った宿が取れなかったらキャンプ場でもいいか、なんて言っていたけど、旅館にして本当に良かった。
もしテントなんて張っていたら穴だらけになっていたかもしれない。
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