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那須の紅葉旅

19.思わずぎゃーっと叫びたくなる温泉



 舗装路は途中で途切れていた。
 看板がなかったら、喜楽旅館はもう無くなったのかと思うところだ。
 藪の中をダートの道が続いている。
 少し歩くとこれまた思わずぎゃーと叫びたくなるような廃屋があらわれた。
 ススキに埋もれて上からは木がのしかかるように枝を伸ばしている平屋建ての建物には、薄れかけた文字で「老松温泉喜楽旅館」と書かれている。
 コンクリとプレハブでできた素っ気ない建物だ。
 どう見てももう使われていない。
 というか、喜楽旅館は夜8時まで日帰り入浴を受け付けていると言うが、間違っても日が暮れてからこんなところを歩きたくない。
 道の反対側にはこれまた葡萄棚のような崩れかけた妙な骨組みが残っていて、その下に鼻の欠けた髭面の張りぼての顔が落ちていた。
 意味不明でやたらと不気味だ。


左の建物のすごさはこの写真では判らないくらい・・・


そして何より、向かいの残骸の下に転がっているあの「顔」は、なに??


・・・うなされそう


 これでも晴れ渡った午後なら笑っていたかもしれない。
 ときおり小雨の降る何とも陰鬱な空模様の日にとぼとぼと一人で歩いていると、昼間でもこう、背筋が寒くなる。
 本当にこの先に温泉旅館なんてあるのかなぁ。

 ようやく終点に着いた。
 道を挟んで左右に朽ちかけた建物が建っている。
 確かにぼろいが、それでも手前の廃屋を見た後だとまともな建物に見える。
 未舗装の道はまだ少し続いていて、その向こうに鉄筋の五階建てらしい四角い建物が建っているのだが、壁は剥げ、ガラス越しに見える障子はびりびりに破れ、これまた鬼気迫る様子だった。
 確か地図では川沿いに喜楽旅館しか書かれていなかった。
 あれが喜楽旅館の持ち物でないとすれば、廃業した旅館か何かだろうか。
 どちらにせよ、気味が悪い。

 受付は右手の建物だった。
 炬燵でテレビを見ていたおやじさんが料金を受け取った。
 「初めてなの? 向かいの建物の階段を下りて廊下をずっと行ったところにお風呂があるから。ぬるめのお風呂にゆっくり入って行ってよ」


あの奥のビルがまた見れば見るほど不気味なのであった 受付はこの向かいの建物。そしてこれが浴室のある方の建物。
これがマトモに見えるのだから、いかに手前が物凄かったか・・・




1-20.得体の知れない名湯へ続く


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