14.雲海閣
あとは
雲海閣の場所だ。
ガイドブックに載っている地図では、メインストリート沿いにあるようにも見えるが、入り口は裏手になるようだ。
地図を見ながら、旅館清水屋の前で曲がらなくてはいけないと思っていたが、角を見過ごして行きすぎてしまった。
鹿の足湯のところで車を停めて、パパが煙草を買うついでにたばこ屋のおばちゃんに道を聞いてきた。
那須湯本のバス停の先で鋭角に曲がり、すぐにもう一度左に曲がると坂道の途中に雲海閣はあった。
結構、泊まる宿や温泉の佇まいなど私の好みとパパの好みは違っていたりするので、心配になって聞いてみる。
「ここだけど・・・いい?」
「いいよ」
彼は鄙びは好きだがB級は苦手なのだ。
早い話が建物が古くて行き届かない面があったりしても、何故か
滑川温泉福島屋みたいなタイプは大好きだったりする。
もし気に入らないって言われたところでもう予約してあるので変更のしようもないのだが、一応気に入ったらしいのでホッとした。
この宿の入り口は鄙びてがたもきていたが、B級の臭いはしなかった。
また、湯本の他の宿でも見かけたのだが、鹿の湯源泉を引く宿でおそろいの大きな暖簾が真新しく、これがあるだけでもずいぶん印象が違うようだ。
中もかなり古めかしさを感じるのは否めない。
いつも電話予約で心配なのは、もしどこかに行き違いがあって予約が入っていないようなことがあったらということだったが・・・。
「予約した○○ですが」
「えっ?」
えって? ま、まさか・・・。
「何人様でしょう」
「大人二人、子供二人です」
「ああ、名前を聞き違えたみたいです。ちゃんと承っています」
ああ良かった。