13.那須ショッピングセンターとサイコロステーキ
ところで夕食を食べる店は早々と決めていた。
那須ショッピングセンター内にある寿々木商店の食堂だ。
ここの名物は千円のサイコロステーキで、あまりに安くて美味しいのでテレビの取材などもしょっちゅうだと言う。
営業時間は11時から19時と半端だが、早めの夕食にすればいいと思っていた。
那須ショッピングセンターは那須湯本の温泉街にある。
ショッピングセンターという名前から、綺麗で広々とした巨大スーパーマーケットのようなものを想像していると思いっきりずっこけることになる。
それは錆びかけた食料品店というのが正しい。
そして、午後1時。
ショッピングセンターに到着したのだが、小さな駐車場は満杯で交通整理をする女性の指示通り向かいの駐車場に車を停めると、入り口からずらりと、雨の中傘を差して並んでいる行列に仰天したものだ。
人気があるとは聞いていたが、こんなに並んでいるとは。
いやいや、私たちはランチをここで取るわけじゃないからいいけど、凄い行列だな。
列をかきわけて店内に入る。
中は意外と広く、生鮮食料品の他、パンや菓子、雑貨なども置いてある。
牛乳はどれも家庭用とは思えないサイズで、この辺りのペンションやレストランが調理に使うために買いに来るのだろうと思えた。
ちょうど食堂の向かいに精肉店がある。
パパが「ちょっとちょっと」と呼んだ。
「この肉、あの行列の食堂で使ってる肉だよね」
「う、うん・・・そうと思うけど」
「だよね。店名も同じだし」
すぐに何を考えているか判った。
「このサイコロステーキ用の牛肉と、それからロースハムとローストビーフを下さい」
確かにランチと違い、宿に泊まる人は二食付きが多いから夕食時はそれほど食堂も混まないだろう。
そうは言っても見たところ、あの食堂内はとても狭そうだし、子供を連れて入るのは厳しそうだ。
狭い分回転率も悪く、子供たちが飽きたり騒いだりしたら迷惑だろう。
それに対してこれから泊まる
雲海閣は自炊設備がある。
焼き加減はプロには叶わないだろうが、肉は買って帰り自分たちのペースで好きに焼いた方が楽して美味しいものが食べられるに違いない。