1.神無月は紅葉の季節
10月の声を聞くと、旅好きはそわそわする。
北から紅葉が南下してくるのはいつごろだろう。
そろそろ山の上では木々の葉が赤く染まっているだろうか。
6月に佐野で田植え体験した稲がそろそろ稲刈りの時期を迎える[田植えの話は
湯西川小旅行参照]。
しかし、9月の終盤になっても体験申し込みをしてある佐野のJA安佐からはいっこうに日程決定の知らせが来ない。
業を煮やして電話をしてみた。
相手は植物だから生育具合など見て稲刈りの日を決めるのは判るが、なにしろ行楽シーズンの10月。ぎりぎりに言われても宿が取れない。
相手は「泊まりで来るんですか?」と吃驚したようだ。
・・・確かに。
田植え体験に東京から来るということ自体珍しいのかもしれないが、さらに佐野に来るのにわざわざ山奥の湯西川に宿を取るような物好きは他にいるまい。
「決定次第、葉書を送りますので」
それから1週間ほどで葉書は届いた。
しかし、既に決定された稲刈り日までは2週間少ししか無かった。
「今度は湯西川はやめよう」とパパ。
うん。朝10時までに佐野に移動するのはきつかった。
「塩原か・・・那須」
地図をめくりながら真岡か馬頭のあたりに宿を取る手もあるかなぁと思っていた。
しかし・・・10月23日でしょ。那須塩原ではそろそろ紅葉が始まっているんじゃなかろうか。
せっかくだから塩原にしようよ。
そう決めたのは既に10日前。
いろいろ探して良さそうな宿に電話を始めたのがちょうど1週間前。
一軒、二軒・・・六軒ほどの宿に「満室です」と丁重に断られた。
調べれば調べるほど、どうしてもここに泊まりたいと思う宿が限られてきて、どこでもいいやという気にはなれなかった。
それに今年の紅葉は遅れているとかで、塩原にはまだ降りてこないようだったし。
那須はこれぞと思う宿が一発で取れた。
「古~い宿ですけど」
「構いません」
「素泊まりしかやってませんが」
「構いません」
それが
雲海閣だった。