3.山道のぼれ
子供たちは細くゆらゆらする吊り橋を全然怖いと思わないらしい。親は冷や冷やしているのに、レナなど何度も行ったり来たりする。
行き先はあっちだよと、山の方を指して歩かせた。最初からかなり急な登り。足下は濡れた朽葉で少し滑りやすい。道はすぐ狭いながら軽い登りの葛折になった。
カナが喜んでずんずん登っていく。レナも泣き言を言わずなんとかついていく。写真を撮ったりしているしんがりの自分が一番遅れ気味だ。
柔らかい浅緑の新芽の間に、紫色のたちつぼスミレ。山桜の薄紅色、白木蓮。
歩き出すと雨はすぐにやんだ。
黒ずんだ
福島屋の建物はどんどん下の方に下がり、やがて見えなくなった。
樹高が低くなる。見晴らしが良くなってきた。
正面から降りてくるのは、おや昨日パパが仲良くなった三人組。
「あと10分ぐらいだよ」と教えてくれる。
ラストに来てレナが疲れた、もう歩けないと言い出した。
今までの行動だと、とてもここまで歩けないんじゃないかと思っていたので上出来だ。
とはいえどうする?
仕方がないので背負って少し歩いてみたが、すぐ岩場になっていてとても子供を背中に担いでなんて上れない。
落っこちそうで怖い道だから一度降りて、と言って降ろした。
あとは騙し騙し歩かせる。
カーブをひとつ曲がって、そこが終点だった。