13.かづさイルカウォッチング
集落ごとに細かい停留所がいくつもあって、地元の人が乗り降りする。
乗ってくるお客さんがいるたびに、バスの運転手は「橘神社の渋滞で遅れてすみません」と謝罪する。
それだけ今日の渋滞は、日常ではなかったのだと思われた。
千々石で止まっていた時間はおよそ20分。
出港30分前到着としたら、元々余裕を見ていた時間が10分程度なのだから、かなりぎりぎりだと思う。
かなりぎりぎりながら、何とかなる時間でもある。
渋滞中はどこまで続いているか判らずものすごく焦ったが、終わってみたら運には見放されていなかったと判った。
小浜温泉を過ぎると、後は大きな町は無かった。
小さな入り江や奇岩を見ながら海沿いの道を行くと、やがて水月橋に着いた。
降りた客は私たち三人だけ。
到着時刻は2時4分。
ほとんど何もない、小さな漁港沿いの道路にぽつんと立つバス停が水月橋。
堤防に添って元来た方を振り返れば、漁港の駐車場とおぼしき所にたつ簡易な建物に、「イルカウォッチング」とか「イルカのりば」と書かれている。
「イルカのりばは無いだろう、イルカに乗るわけじゃないんだからさ」とカナと笑いながら、私はそちらを目指して歩き出した。