◇◆赤倉温泉◆◇
子連れスキーと温泉旅行

10.赤倉の居酒屋ほへと

　部屋で一時間ほど休んでから、いよいよ夕食を取りに出ることにした。
　玄関で子どもたちに靴を履かせていたら和泉屋の女将さんが出てきて近くの定食屋や居酒屋の割引券を出してくれた。

　相変わらず霧が深い。
　割引券を貰った和亭というところも覗いてみたが閉まっているようだったので角の「ほへと」という居酒屋に入った。最初は同じビルのもう一軒の店を考えていたが、カナがご飯を食べたがると思ったので焼きおにぎりなど食べられそうなほへとの方にした。

　まだ5時半なので店内に客の姿は無い。
　鹿刺し、牛カルビ串、ポテトフライなどを注文した。
　ホワイトボードに今日のお勧めが書かれていて、そこのポテトフライのところにスマイルマークのような絵が描かれていたので何でだろうと思ったら、運ばれてきたポテトフライはスマイルマークに型抜きされていた。

　さらに焼きおにぎり二つ、竜田揚げを追加。
　「えーと、この、とちおのあぶらげって何ですか?」
　「油揚げですよ。栃尾の名産で大きいんです」
　「じゃあ、とちおのあぶらげもひとつ」

　なるほど大きい。
　栃尾の油揚げはジャンボサイズ。大きいと言うより分厚い。まるで厚揚げみたいだ。
　でも厚揚げと違って中身はふんわり油揚げそのもので、薬味を乗せて食べるとぱりぱりと美味しい。

　私たちが食べていたら若者の集団がどやどやと店内に入ってきた。
　いかにもスキーかボード帰り。
　赤倉の観光客はほとんどが宿で夕食を取るだろうから、こうした居酒屋が賑わうのはもう少し時間が経ってからだ。

　食べ終わって外に出たら、あれ?　さっきと何かが違う。
　そう、いつの間にか霧が晴れていた。
　全てをフィルター越しに見ているような輪郭のぼやけた世界から、夜の温泉街にぴたりとフォーカスが合うように大気が透明に戻っていた。