「ぬるいんだよね」とパパが言った。
先ほどの森のこだまだけじゃなく、私が共同浴場めぐりをしている間に一人で入ってきた甍の湯もそうだったらしいが、
四万たむらのお湯がぬるすぎると言い出した。
元来四万のお湯は熱い。
しかしたむらでは快適に入浴できるように加水して温度調節している。
「女湯は熱くはなかったけどそんなにぬるくもなかったよ」
「もっと熱いお湯に入りたい。どこか熱いのは無いのか?」
「・・・四万たむらの中で今まで入った中では・・・竜宮の湯が一番熱かった」
「じゃ、そこ行ってみる」
子どもたちを部屋に置いて、私たちはタオルを手に花涌館を出てたむら本館に向かった。
日が暮れて、気温がかなり下がっている。
さくらプールの横から外に出ようとすると、パパがさっきここを通ったけど通行止めになっていたよと言い出した。
「うっそー」と言いながら、身を縮めながら歩いていくと、パパの言う通行止めの看板は無かった。
「さっきはあったんだよ」
ふと傍らを見ると、横によけられた看板が。
記されているのは、落雪のおそれがあるので注意しろという言葉。
なんだ通れるのかとパパはひとりごちて先へ進んだ。