もうとっくにお日様が山の陰に隠れた夕方5時頃、ようやくパパと子どもたちが
ナステビュウに戻ってきた。
がっちゃんが先に入って、下駄箱に靴を仕舞っているパパに升酒を差し出した。
一昨年の
千手の湯でも同じだったが、新潟の日帰り温泉は元旦には無料で日本酒を振る舞ってくれる。
でもこらこら、せめて飲むのはちゃんと入館料を払ってからにしようね。
大人は体力の限界を超えたという死にそうな顔。
なのにレナがぐずっている。
カナはちび姫ちゃんと一緒にどこかへ行ってしまった。
仕方がないのでレナを抱っこして大広間に戻った。
「ほら、もう泣かない。隣で赤ちゃんが寝ているんだから静かに」
大広間の私たちの隣には三世代と思われる一家がいて、よちよち歩きの男の子がさっきまでお父さんと遊んでいたが、今は遊び疲れたのかぐっすり眠っている。
スキーでお腹が空いただろうと思って子どもたちに何か食べるか聞いてみたが、みんなあまり乗り気じゃない。
がっちゃんが、スキー場で最後に沢山ラーメンを食べてきたからだろうと教えてくれた。
とりあえずコシヒカリおにぎりと白玉あんみつ。
みんな食べているうちにお腹が空いてきたのか、おにぎりは次々と追加注文が出て、結局三回ぐらい立て続けに買いに行く羽目になった。
それから交替でもう一度お風呂へ。
今度は子どもたちを連れて。
さっきまでとは違い、洗い場はえらく混雑していて、ようやく一ヶ所見つけたシャワーをyuko_nekoさん一家と一緒に使わせてもらった。
三人いる子どもたちの頭を順番にぬらして、順番にシャンプー、順番に流すといった具合。ベルトコンベアーの上の流れ作業みたい。
内風呂にほんのちょっと入ってから、露天風呂に出た。
「ここ、来たことある?」とカナ。
うん。去年も一昨年も来たよ。覚えているかな。
「去年はあの辺に雪がいっぱい積もっていて、お風呂の岩の上に雪を並べて遊んだよ」
「レナは覚えてるよ」
あのときは綺麗な夕暮れだった。
今日はもう日が落ちて、まん丸な月はぼんやりと暈をかぶって目を凝らすと光の輪が二重に見えた。