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がんばれ新潟■雪国のお正月*2006■

13.番台のある温泉



 六日町の公衆浴場、中央温泉は郵便局から少し裏手に入ったところに入り口があるので場所を聞いていなかったらきっと判らなかった。
 ちょうど入り口近くがぬかるんでいて靴がさらにぬれてしまった。
 入り口から既に男湯と女湯が別れていて、暖簾とお正月飾りが下がっている。
 朝10時から夜11時までの営業だが、「夜 十一時にお出でいただいても ごゆっくりと 十一時を過ぎても ご入浴をお楽しみ下さい」と張り紙にある。
 ドアを開けると入り口に昔懐かしい番台があり、男湯女湯両方から入浴料が徴収できるようになっている。
 狭い入り口で靴を脱いでいると、さらにもう一人入浴客がやってきて回数券を払っていた。
 案の定靴の中も靴下もびしょびしょだった。ジーパンの裾もだ。仕方ない。帰りのことはまたお風呂上がりに考えるとして、とにかく早く入ろう。


六日町 中央温泉の入り口 まだ三が日が開けていないのでお正月飾りが


 先客も一人いた。
 私とほぼ同時に入ってきた人と浴室には全部で三人。
 長方形で一箇所だけ角を丸めた御影石調の浴槽がひとつ。透明な湯が溢れている。
 外の見える窓が無い代わりに、壁に奥入瀬だかの清流の写真が貼ってあるのが何とも妙な味を出している。
 料金を払うときに番台の奥さんが「今日はお湯がぬるめで申し訳ないです」と言っていたので、本当にぬるいのかと思ったらかなり熱かった。
 普段は43~44度ぐらいあるそうだが、ここ数日源泉の温度が下がっていて41~42度程度しかないのだそうだ。いや42度あれば十分だと思うけど、外が寒かったせいか体感温度的にはもっと高く感じた。
 肌触りはきしつく。
 石膏のような薬っぽい臭いとどこか甘いような臭いがほんのわずかする。
 でも昨日まで入っていた松之山の濃すぎるお湯に比べれば硬さは感じるもののそんなに強いインパクトは無い。
 雪のせいで外の物音は聞こえない。
 密閉された浴室で湯の音が響くだけだ。

 脱衣所に戻ると、まだ幼稚園にも行っていないくらいの小さな男の子が一人で立っていた。
 「あれ? お母さんは?」
 吃驚する私に、番台の上から声が聞こえた。
 「子供一人だと思った?」
 すぐにドアが開いてお母さんらしい人が入ってきた。外で傘の雪を落としていたらしい。
 そして彼女は先ほどから番台にいた奥さんと交替して番台に座った。
 お先にと奥さんは雪の中、帰っていく。
 交替したお母さんはきっと子守をしながら番台を勤めるんだ。
 終了時間の十一時を過ぎてもごゆっくりと張り紙があったけれど、こういう方たちが快く管理してくれているからこそ、遅くに仕事を終えた人でも温泉で一息つくことができるんだなとそんな風に思った。

 帰り道も雪との闘いだった。
 時々車道の中央の消雪パイプの水にも思いがけない攻撃を受ける。
 結局靴下は脱いでジーパンは裾をまくり上げて帰途についた。
 六日町温泉の熱い湯はよく温まったのでもう寒くは無かった。


飾り気の無い浴槽が一つ、透明で清潔な湯が溢れている




5-14.金誠館の浴室にてへ続く


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