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がんばれ新潟■雪国のお正月*2006■

9.雪の迷路



 カーナビに目指す六日町温泉の位置を入力し、後はそのまま任せきりにした。
 ところが八箇トンネルを抜けたところで六日町市街地に入る手前、ナビは近道をしようと思ったのか、国道を外れた。もう本当に町まであと2、3キロというところだ。
 時間は既に午後四時半を回って、辺りは薄暗くなってきている。
 スキー場とユースホステルの表示が見えた他は人家も車の影もない。
 何だか道の雪が増えてきた。
 車通りが少ないということで、不安がよぎる。
 前方にY字路が見えてきた。右に行けばユースホステルがあるようだ。ナビは逆の左を指している。
 パパが「ナビを信頼せず、遠回りでも国道を行った方が良かったかな」と呟いた。
 左の道に入って直ぐ、左手に横道と道の奥に建物らしいものが見えた。でもひと気は無い。
 「・・・やばそうだな、こんなところでスタックしたら目も当てられない」
 車一台通るのがやっとの道の両側は高い雪の壁。そして路上は数センチあるいはもっと深い雪。
 何時間前につけられたのか轍の後がひとつ残されているだけだ。
 「引き返す?」
 「引き返すったって・・・」
 ヘッドライトをつけてのろのろ運転を続けていたパパはそこで絶句した。
 道の先は無かった。
 行き止まりだったのだ。
 というか、除雪された道はそこで終わり、雪の壁で行き止まりになっていた。
 「何だよ、これ~」
 思わず二人して青ざめた。
 ああ、温泉旅館の乾いた暖かい和室は果てしなく遠いぞ。


左右は高い雪の壁、正面は雪の行き止まり
辺りはとっぷりと暗くなり、足下の雪はタイヤがはまったら身動き取れないくらい深い・・・


 道が狭く、おまけに轍を外れると路上でもたっぷり雪が積もっているのでとてもその場でUターンなんてできない。
 「このままバックでY字路まで戻るとか・・・」
 「無茶言うな」
 雪はますます激しく、辺りはどんどん暗くなってくる。
 パパは車を降りて位置を確認して、さっき左手に見えた横道までバックで戻りそこでUターンする覚悟を決めた。
 「降りて後ろを見てくれる?」
 「了解」
 雪の上に降りると、あっと言う間に髪の毛に雪が積もり始めた。
 足下の雪もかなり深い。
 このUターンに失敗して雪の中にはまってしまったら、いったいどうしたらいいだろう。
 雪も林道もなんでもござれのがっちゃん車と違って、うちの車は図体がでかいばかりで軟弱なのだ。
 「バック、バック、バック、ストーップ」
 行きすぎた、危ない危ない。
 「もうちょっと戻って切り返して」
 暗いし濃淡のない雪景色は遠近感がまるで判らない。
 泣きたくなってきた。



5-10.六日町へ続く


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