9.雪の迷路
カーナビに目指す
六日町温泉の位置を入力し、後はそのまま任せきりにした。
ところが八箇トンネルを抜けたところで六日町市街地に入る手前、ナビは近道をしようと思ったのか、国道を外れた。もう本当に町まであと2、3キロというところだ。
時間は既に午後四時半を回って、辺りは薄暗くなってきている。
スキー場とユースホステルの表示が見えた他は人家も車の影もない。
何だか道の雪が増えてきた。
車通りが少ないということで、不安がよぎる。
前方にY字路が見えてきた。右に行けばユースホステルがあるようだ。ナビは逆の左を指している。
パパが「ナビを信頼せず、遠回りでも国道を行った方が良かったかな」と呟いた。
左の道に入って直ぐ、左手に横道と道の奥に建物らしいものが見えた。でもひと気は無い。
「・・・やばそうだな、こんなところでスタックしたら目も当てられない」
車一台通るのがやっとの道の両側は高い雪の壁。そして路上は数センチあるいはもっと深い雪。
何時間前につけられたのか轍の後がひとつ残されているだけだ。
「引き返す?」
「引き返すったって・・・」
ヘッドライトをつけてのろのろ運転を続けていたパパはそこで絶句した。
道の先は無かった。
行き止まりだったのだ。
というか、除雪された道はそこで終わり、雪の壁で行き止まりになっていた。
「何だよ、これ~」
思わず二人して青ざめた。
ああ、温泉旅館の乾いた暖かい和室は果てしなく遠いぞ。