8.越後の蕎麦は布海苔がつなぎ
席は半個室のような所へ案内してもらえた。
メニューの蕎麦に同じ様なものが二種類あったのでどう違うのか店員に伺ってみると、器が違うだけですと力の抜ける答えが返ってきた。
つまり、へぎを使えばへぎそば、使わなければただのそば。
子供たちには出汁巻き卵とおむすび、大人は天ぷら付きへぎ蕎麦を二人前。
へぎそばと言うのは蕎麦の種類ではなく盛り方につけられた名称だ。
養蚕のための蚕を育てる木の箱「へぎ」に、ちょうど織物用の糸を詰めるときのように8の字の形に蕎麦を並べて出したものを「へぎそば」と呼ぶ。
さらに越後魚沼地方の蕎麦はつなぎに布海苔を使うのが特徴だが、この布海苔(海草)というのも元々織物の糸に張りを持たせるために糊付け用として使われていたもの。
まさにこの地方の蕎麦というのは主産業の一つであった織物産業に根ざしている。
布海苔を使った蕎麦の歯ごたえは独特だ。
この間、
松之山のじょうもんの湯おふくろ館で食べたときにも感じたが、葛切りのようなしこしこつるつるとした感触がある。
蕎麦なんだけど蕎麦じゃないみたい。
ここの蕎麦はおふくろ館のそれより洗練された味がしたが、おふくろ館の方がもうちょっと味があった。