5.婿投げと墨塗り
店の壁に、「松之山温泉 むこ投げ すみ塗りのお婿さん及び担ぎ手募集」の張り紙があった。
雪深い
越後松之山温泉の小正月には、婿投げ、墨塗りという奇習がある。
婿投げというのは新婚のお婿さんを薬師堂前の崖の上から放り投げるという珍妙な行事で、その昔の略奪結婚の名残だという。余所者に村の娘を略奪された腹いせに若い衆が婿を5メートルの高さから投げおろすという強烈なものだ。
墨塗りは塞の神行事で焼かれたお正月飾りなどの灰と雪を混ぜて作った墨を互いの顔に塗りつけあいながら「おめでとう」と言い合うという、これまた奇妙奇天烈な風習で、600年も前から伝わっているという。
流石に小さな松之山の町だけではそうそう新婚さんもいない・・・というわけで、広く募集をかけているようだ。
応募するお婿さんは自分を担ぐ担ぎ手4名も手配しなければいけないようだが、そのかわり無料で温泉に泊めてもらえる。
食べ終わって店の外に出てみると、雨は雪に変わっていた。
まだみぞれ混じりの湿っぽい雪だが、暗くなるにつれ、気温が下がりもっと積もりそうな雪になるんじゃなかろうか。
ちび姫ちゃんは、次、いつ会える?と聞いてくる。
いつだろうね・・・。
夏からほぼ月に一度の割合で一緒に旅行に行っていたものね。
春になるころは会えるだろうか。
今日は彼女は泣かなかった。
車に乗り込んでしまうと顔が見えなくなった。
うつむいてしまったんだろうか。
yuko_nekoさんが手を振っていた。
雪道に強いがっちゃん車は、途中まで私たちの車の前を走っていたが、
ナステビュウのところで止まったので追い抜いてしまった。
さよなら、yuko_nekoさん、がっちゃん、ちび姫ちゃん。
楽しいお正月をありがとう。