8.家主の来訪
貸民家に戻って午後5時。
家主の若井さんが姿を見せた。
子供たちはまた庭で雪遊び。パパは一眠りすると行って隣室に消えて30分、いい気持ちで熟睡していたところを起こされる羽目になった。
いや、いいんじゃない?
ここで起きなかったら明日の朝まで寝ちゃうかもしれないから。
若井さんが仰るには、なんと今日、1号館に泊まっていらっしゃるお客様は、私の
前回の旅行記を見て来て下さったというのだ。
これは驚き。
こんなことが現実にあるのね。
いやぁ、滅多なことは書けないな(笑)。
若井さんご自身、この5号館が完成したときに一度泊まってみたのだそうだ。
「やっぱり寒いですね。天井を作らないと駄目かな」
何しろヒーターで部屋を温めても、温まった暖気はみんな吹き抜けの天井から逃げてしまうのだ。
でも天井に渡されている黒々とした太い梁は活かしたいのだそうだ。
本当なら下から見上げる茅葺きも、今のまま活かしたいのだろう。冬だけ天井を張って、夏はとっぱらう・・・なんて簡単にはいかないのだろうな。
前回は手作り納豆を頂いたが、今回は手作りマーマレードを頂いた。
感謝ついでにおずおずともう一つお願いしてみる。
「あのう・・・5号館には湯たんぽは無いんですね?」
年末年始に1号館で過ごしたとき、湯たんぽにどれほど救われたか・・・。
「1号館には沢山あるんですけどね」
はい、知ってます。
「運んできましょうか」
ああ、もう、ぜひぜひお願いします。
湯たんぽだけが心の支えなんです。
若井さんはそれから1号館に引き返して、人数分の湯たんぽを5号館に運んできて下さった。