私たちが上がると、ちょうど廊下のベンチのところでさっきいろいろ教えてくれた年輩の常連さんが涼んでいた。
「おかげさまで入ることができました」
「どうー? 良かったでしょ。年寄りの言うことは聞くもんだよ」
常連さんは足を悪くしてから
豊国館に湯治に来始めたそうだ。
「全然歩けなかったのよ、嘘みたいでしょ」
嘘みたいです。
「歩けないと考えることもどんどんネガティブになってしまってね、やっぱり自分で動いて自分で何でもできるのが一番だよ」
ですよね。
この豊国館は共同の炊事場があって自炊湯治が可能だ。
冬季はスキー客が多いので二食付きのみ受けているが、雪のないシーズンは食事抜きで泊まれる。
泊まりで来るのもなかなか良さそうだなぁ。
帰りに帳場にいたのはさっきの男性ではなく女性だった。
「あのー、この辺でタクシーを拾うことはできますか?」とyuko_nekoさんが聞いてみたが、この辺には流しのタクシーはないし麓から呼ぶから30分以上の時間と1万円ぐらいの料金が掛かるとのこと。そ、そんな~。
「すぐ下に万座のバスターミナルがありますよね。そこにタクシーがいるってことは?」
「無理かしらねー。麓まで降りたいの?」
「いえ、
万座温泉ホテルまで登りたいんです」
「・・・歩いて登るしかないかしらねぇ」
・・・やっぱり。