19.豊国館
観光案内所を出て下っていくと、すぐに大きな建物が見えてきた。赤い屋根・・・というよりは気持ち赤っぽい屋根だが、あれだろうか。意外と綺麗な大型ホテルだな・・・と思ったら、それは
豊国館ではなく、プリンスホテル系列の万座高原ホテルだった。
もっと道を下ると、万座高原ホテルの奥に予想していたよりもっと慎ましい建物が見えた。なまじ一瞬万座高原ホテルが豊国館かと思ってしまった後なので、益々わびしい佇まいに見える。
確かに屋根が赤い。
これが万座温泉豊国館のようだ。
表玄関のある方へ回ると、こぢんまりとした入り口ながら、やはり三連休なか日の午後だけあって出入りする人の数が多い。
玄関も
万座温泉ホテルや万座プリンスホテルを見てきたばかりだと、古くてごちゃごちゃとして良く言えばアットホームな雰囲気に思える。
奥まったところに帳場があって、たぶん電話に出たと思われるおじいさんが番をしていた。
どうやら電話で愛想がなかったのは深い意味があったわけではなく単にいつもそういう口振りなのだと思われた。
廊下も古びてぎしぎしと鳴りそうだ。
昔ながらの湯治場という響きがぴったり来る。
女湯と書かれた戸を開け、狭い脱衣所でぬいで浴室に入ると内湯に二人、露天風呂に一人、先客がいらした。
「あらあなた達、運がいいわね。ついさっきまでは随分混んでいたのよ。ちょうど空いてきたところ」
そう教えてくれた方もすぐに上がってしまわれた。
露天風呂に出てみた。
露天風呂にいた方もすぐに上がってしまった。ほとんど貸切だ。