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◆◇九州温泉巡り旅行記◇◆
阿蘇-長湯温泉-黒川温泉

6.新明館の洞窟風呂










 新明館のお風呂が有名なのは洞窟風呂になっているからだ。
 単に洞窟の中にお湯を張っているだけなら、千葉の養老温泉新川とか、長野の七味温泉紅葉館とかすぐにいくつか思いつくけれど、この新明館が特殊なのは、館主自らが3年半掛けてノミ一本で彫り上げたという逸話があるからだ。

 いやこれとんでもないでしょうよ。執念でしょうよ。一人でノミ一本とか。
 だから結構小さい洞窟なんだろうとたかをくくっていたらとんでもなかった。

 勝手に洞窟がひとつある形をイメージしていたら、全然違った。
 迷路というのはさすがに大袈裟だが、三角形に通路がある感じで、入るとすぐに道が二手に分かれて、片方に進むと角があり、曲がるとまた角があり、結局直進し続けると一周する仕組み。
 そして川に近い方の角の所に脱衣所があると思ってもらえばいい。




 脱衣所も洞窟の一部のようなワイルドな作りで、足元に簀子、壁際に籐の籠を乗せた木のベンチがあるだけの簡素なものだったが、自分が使っている籠以外は空だった。
 なのに中から声がするので変だと思ったら、奥の方のもう一つの角の所にたぶん館内から続く脱衣所があるようだった。
 きっと宿泊者用の脱衣所なのだろう。




 そして残る角の所に宿泊者と思う入浴者二人がどっかりとスペースを取ってひたすらしゃべり続けていた。
 いやもう本当にずっと。
 私が入っている間中、ずーっと話し声が洞窟内に響いていたから。





4-7新明館の洞窟風呂その2へ続く


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