◆◇九州温泉巡り旅行記◇◆
阿蘇-長湯温泉-黒川温泉
13.筋湯の共同浴場 露天岩ん湯と薬師湯
上がったらパパの姿は無かった。
まだ入っているのかと思って
うたせ湯の建物の前をうろうろしていたら、別の方角から戻ってきて、「お昼ご飯を食べる店は無かった」と言った。
えっ、曲がりなりにも温泉街だし、せめて蕎麦屋とかラーメン屋ぐらいならあるんじゃないの?
「一回りしてきたけど全然無い。まったく無い」
ありゃ。
まあまだ11時半でお昼ご飯には早めの時刻だけど、お昼前後に温泉街にいるならちょうどいいと思ったんだけどな。
「とにかく無い。黒川温泉に着いてから食べるしかない」
なんか昨日の長湯温泉と同じようなパターンになってきたぞ。
じゃあさくさくと黒川温泉に移動するんだなと思ったら、
「どうせならもう一つの共同浴場も入っていくか?」とパパ。うわぁ、なんて珍しい。いやいやありがたい。
さっき見たとおり、筋湯温泉のうたせ湯じゃない方の共同浴場は男女別個の建物で、今日は
薬師湯が女湯、川沿いの
露天風呂の岩ん湯が男湯だ。
うたせ湯からこれらの共同浴場までは徒歩2~3分程度の距離。
財布を見たら小銭が無かったので念のためパパに100円玉を三つ貰ってそれぞれのお風呂に向かった。
この時300円貰っておいて良かった。
薬師湯と岩ん湯はそれぞれ入浴料300円で、うたせ湯と違ってお釣りの出る自販機でもなく浴室に無人のコイン投入口があるだけだったから。
薬師湯は車は通れない狭い道の右手にある。
とにかく年季が入って渋い筋湯温泉の温泉街の中で、薬師湯はそこだけ楚々とした美人がいるようなえらく洒落た雰囲気だ。
渋墨塗りの板張りで、障子風の窓がついている。
特に鍵などは掛かっておらず、ギィと開けると中は無人。
さっきの打たせ湯が迫力の大音響だったせいか、こちらの印象はまさに静寂そのものだった。
脱衣所と浴槽が同じスペースにある外湯ならではの造りだが、外観だけでなく浴室内も非常に洗練されている。
浴槽は長方形。床と浴槽の縁は総桧造りで、浴槽の底は石。
先ほど外から見た障子風の格子の窓からタイルに切り抜かれた陽光が差し込んで、無色透明のお湯の表面に切り絵のように映っている。
通りに面した窓だけでなく、斜面側にも窓があって、そちらは窓は開いているのに外の石垣でほぼふさがっている。
天井も高く、全て木組み。
先を斜めにカットした竹筒から滔々とお湯が滴り落ちている。
源泉温度が高いので加水していると張り紙に記載。
においなどはほとんどない大人しいお湯だが、ぽかぽかになる。
見た目は水道水のように見えても味は全く違い、舌に絡みつくテクスチャー。
湯上りは久しぶりに指がしわしわになった。
なお、入浴料を入れる料金箱だが、一日2回回収しているとのこと。
ちょうどパパが川沿いの露天風呂岩ん湯に入っている時にうたせ湯の管理人が回収に来たそうだ。
でもってさっき打たせ湯にいたのにこっちにも入っているのかいとちょっと意外だったように言われたようで、あと、奥さんが女湯に入浴中ならそちらの料金箱回収はまた後にするわと言っていたと後で教えてくれた。