33.共同浴場天満湯 休館のお知らせ
食べ終わった後は、帰ると言っても泊まる宿はすぐ隣だ。
当然パパはそのまま寝ると言う。食べたし呑んだしお風呂にも入って十分満足したと。
だけど私はちょっと足先も冷えてきたし、寝る前にもう一度お風呂に入りたかった。
今日はさんざん入って来たじゃないかと言われればその通りなのだが、普通の旅館なら寝る直前にもう一度入る。
ここはお風呂も無い素泊まり宿なので、たまたま外に出る手間が掛かるだけだ。
せっかく温泉街に泊っているのだし。
行くところは目星をつけていた。
ちょうど長湯温泉街に入って川を渡り、突き当り。
ガニ湯本舗天風庵から行くなら正直屋の前を通り過ぎてすぐの右手。そこになにやら共同浴場らしきものがあった。
パパに「先に寝てていいよ」と言って、小銭とタオルを手に私は部屋を出た。
「平素より天満湯を御利用いただき誠にありがとうございます。
湯量の不足により、当分の間、休館とさせていただきます。
なお、
長生湯は従来通り開館しておりますので、そちらのご利用をお願いいたします。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解ご協力のほど、お願いいたします 湯の原温泉組合」
ががーん。
長湯温泉が(ところによって)湯量不足と言うのは本当だったんだ。
休館のお知らせのほかにもシャッターの降りた入り口の周辺には、ペット同伴の入浴は不可とか、入浴料は100円なのでご利用の際は自動ドアから一人ずつ入室してくださいとか、スタンプラリーは正直屋に置いてあるとか、営業していた当時のものと思われる貼紙が全部残っている所が侘しさを増す。
再開の見込みはあるんだろうか。