31.清風荘 元湯
部屋に戻るとパパはすっかりくつろいでいた。
既に時刻は6時を回っていて、あと30もしないうちに夕ご飯。
「夕食前に一風呂浴びるか」と言うのでもろ手を挙げて賛成。どこにしようと言われて、さっき人が多そうだったので諦めた内湯の元湯を提案してみた。距離的にも部屋から近いし。
熱いかと思えばごく適温。
地獄温泉の敷地全体にゆで卵臭が漂っているが、お湯からはそれほど感じない。
少し高い位置から工事現場みたいな飾り気のないパイプを通してじゃぼじゃぼとお湯が投入されている。
これがぬるめで手ですくって飲むと意外に金属のにおいが強い。でもって酸っぱい。飲んでからはお湯からも金属のにおいがするような気がする。
このパイプとは別にかかり湯と書かれた木の槽があって、そちらにもパイプが引かれている。
この熱さの違う二本のパイプは別々の源泉で、浴槽内の温度調節のため、季節によって混ぜる量を変えているようだ。
とにかくお湯の量はすごく多くて縁からざこざこと掛け流されていく。
すぐにあたたまり、お肌はすべすべだ。
木で組んだ高い天井を見て思う。うーん、なんかお腹が空いてきたな。