タクシーはしばらく住宅地を走り、いつの間にか山道を登っていた。
正直なところ、バスで通ってきた道が町中の大きな通りばかりだったので、賑わう銀閣寺前から少し走っただけでこんなに山に入るのかと驚いたほどだ。
もちろんきちんと舗装はされているが、中央車線も無くガードレールもところどころ曲がっているような古そうな道だ。
材木関係の建物などはたまにあるが、民家は無い。
道は川に沿って蛇行しながら林の中をのびている。
車に酔いやすいレナには先に酔い止めを服ませておいて良かった。くねくね道だと5分もしないで気持ちが悪いと言い出すから。
北白川ラジウム温泉は思っていたより近かった。
銀閣寺道からのタクシー乗車時間は正味たったの8分。
ローカルなバスの乗車賃を3人分払うことを考えたら、小型タクシーを使った方が安く済むかもしれないと思うくらい。
北白川ラジウム温泉の建物は山肌に張り付くようにして建てられていて、周りに民家の一軒も無いがすぐ隣には南無大聖不動明王と染め抜かれた幟が大量にはためく宗教施設とも温泉施設ともつかないような建物がもう一軒建っている。
二軒の温泉が軒を連ねているという情報は事前に読んでいたが、源泉は同じなのだろうか?