子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆
- 設備★★★★☆ 雰囲気★☆☆☆☆ 子連れ観光客向きの雰囲気ではない
子連れ家族のための温泉ポイント
北白川ラジウム温泉は銀閣寺の辺りから山を越えて隣県の大津に抜ける途中にある温泉施設だ。
隣にもう一軒、地蔵谷不動温泉という施設がある他は、地図を見る限りほとんど何もない山の中、というか川筋。
バスは比叡山方面行の京阪バスが走っているが、いかんせんローカルなので本数がとても少ない。正確に言うと一日たったの2本。
だもので、まあ帰りには15時38分発のものを使うとして、行きは銀閣寺近くでタクシーを拾い行くことにした。
運転手は北白川温泉と言ってもピンとは来なかったようで、少し説明したら「ああラジウム温泉な」とようやく判ってもらえた。
タクシーはしばらく住宅地を走り、いつの間にか山道を登っていた。正直なところ、賑わう銀閣寺前から少し走っただけでこんなに山に入るのかと驚いたほどだ。
しかし距離は思っていたより近かった。
銀閣寺道からのタクシー乗車時間は正味たったの8分。
ローカルなバスの乗車賃を3人分払うことを考えたら、小型タクシーを使った方が安く済むかもしれないと思うくらい。
入り口には植物を植えたプランターで「営業中」「日帰り入浴できます」という札が押さえてある。
建物全体は決して新しくは無いが、玄関付近はリニューアルしたばかりなのか新品のぴかぴかだ。
中も綺麗だった。狭いながらもフローリングの床に観葉植物の飾られたロビーは最近できたばかりの小じゃれた施設のようだ。
受付で一人1,450円というお風呂だけの料金には少しばかりお高い入浴料を払うと、こちらは初めてですか?と聞かれて、そうだと答えると浴室までご案内しますと二階まで連れてきてくれた。
真新しい洒落た作りは階段までで、二階に上がるとそこはむかぁしからある湯治場の雰囲気を残す廊下だった。
左側には畳の大広間休憩室が、右側の狭いスペースには古びたマッサージチェアが置いてある。
浴室手前のステンレスの洗面台も、貴重品入れのコインロッカーも年季が入っている。
しかし脱衣所はまた玄関付近と一緒に作り直したものか木目も鮮やかにぴかぴかだった。
浴室もまた脱衣所同様新しい。
床と浴槽は滑らないようにざらざらとさせた赤御影石で浴槽自体は浴室の奥にすっぽりとはめ込まれた長方形だ。大きさは4人ぐらいが入れるサイズ。
今日はこちらが女湯だが、石垣のように石を組んだ浴槽のお風呂と日替わりで男女の入れ替えをしている。
浴槽の奥は蛇腹式の広い窓になっていて、これを全開すれば露天風呂気分に浸れるということは後から知ったが、そもそもこの浴室を公式サイトで露天風呂と呼ぶのは少々無理があると自分は思う。
ちなみに脱衣所には「浴室内の空気にはラジウムが一ぱい含まれておりますので窓を開け放たないように願います」と記載された入浴の注意書きが貼られていた。
これは窓を開けるべきなのか開けないべきなのか悩むところだね。
洗ってから湯船に足を入れると、お湯は決して熱くない。ちょうど良い感じ。
きしつきがある他はお湯の色は無色透明、臭いも味も無い、温泉だと言われなければ判らないかもしれない。いや、言われてもわからないかもしれない。
しかし入ると少し心臓がドクドクする感じがあり、とにかくすぐにどっと汗が出てくる。
お湯の温度や入っている時間からするとどうしてこんなに発汗するのかと思うほどだ。何だかまるで特徴が無く思えるお湯だけにこのギャップがとても面白い。
浴室内にはドアがあって、隣にももう一つ浴室があった。
浴室の大きさはどちらもほぼ同じ。浴槽の大きさも位置もほぼ同じ。違いは古さだ。片方は床も壁も浴槽の内側も古そうなタイル張りで、そう、観光用ではない共同浴場でよく使われているようなお風呂の雰囲気だ。石をかぶせた素朴な湯口からお湯がどぼどぼと出ている。
中に入っている源泉はどちらも同じもの。
新しく綺麗な浴室が良いか、使い込まれてなじんだ浴室が良いかで選べばよいらしい。
新しい方も良いけれど、古い方も落ち着くな。
古い方が体に効きそうな気がするのは気のせいかしら。
湯上りは脱衣所を出たところにある洗面台で水分補給をした。
水分が抜けてしまったように感じていたので、冷たい水がスーッと染み込んでいくような気がする。
そこへ宿のご主人とおぼしき男性が通りかかったので、不動明王の幟がはためいていたお隣さんと源泉が同じなのか聞いてみた。
すると、北白川ラジウム温泉の源泉は30m先の裏山の斜面の岩盤から自噴しているもので、特のその花崗岩の岩盤を通ることによりラジウムが多く含まれるが、隣接する不動温泉は地表から汲み上げている。恐らく元の源泉は同一だと思われるが、採取する場所が違うことにより、あちらの温泉は雨水などが混入し有効成分が薄く、雑成分が多いとのこと。
片方からだけ聞いた情報なので全てが正しいとは限らないが、採取場所・方法による違いと言うのはあるかもしれないと思われる。
「この温泉は口コミで来てくれる人も多く、ほらキャスターの筑紫哲也さん、癌で亡くなる前にね、うちの温泉がよく効くよく効くって通ってくれたんですよ。入浴したり休憩室で休んだりしながら一日ゆっくりされる方も多くてね」とご主人。
確かに先ほど入れ違いで上がった先客が休憩室でくつろいでいる姿が見えた。
「館内の蛇口から出るのは全部温泉なんで、汲んで帰る人も多いですよ」
そうなんだ。じゃ、もう一杯飲んでいこうかな。
帰りのバスについても聞いてみたら、お客さんが少ないときは一気に山を下ってくるのでたまに時刻表より早く通過してしまうこともあるとのこと。
お礼を言って少し早めに出発することにした。
この温泉の効能のせいなのか、元々あまり汗をかかない体質なのに全然汗が引かない。
時刻を確認しようとスマホを見たついでにアンテナを確認したら、
この辺りはauの電波は圏外のようだった。