ようやくロープウェイの山麓駅まで戻ってきた。
あの本白根のカベに引っかかっていたときは、いったいどうやったらこの窮地から抜け出すことができるのだろうと暗澹たる気持ちだったが、こうして板を外して靴をゆるめてレストランの暖かい窓際の席に座ってフルーツなど摘んでいると、さっきのことはもう笑い話のひとつに過ぎなくなっていた。
コースの最後の方は本当にゆるやかで、カナの顔も険しさが取れた。
「ここから下は初心者コースだから怖いところはないと思うよ。今度はそっちを滑ってみる?」
「・・・うん」
パパは胸をなで下ろした。
草津国際スキー場の一日券は
全日本スキー旅行業協会の割引券を使っても大人5,000円、子供4,100円の家族四人で18,200円、加えて土日は駐車場代も1,000円取られるからトータルでほぼ二万円。この金額は我が家の家計を泣かせるに十分だったので、これでカナがもう滑らないと言った日には、大金をどぶに捨てたようなショックだったから。