この旅館(名前が明かせなくて申し訳ない)のお風呂は決して広くも綺麗でもないが、共同浴場よりもお湯の鮮度が良いと一部では評判だ。
何だかウナギの寝床のように細長い浴室で、手前に小さい洗い場、奥は左右のスペースいっぱいに使って浴槽がある。
床が石貼りで、特に脱衣所から入って直ぐの足下が冷たくざらざらしているので子どもたちがきゃあきゃあ言い出した。
「痛くて冷たい」
大丈夫大丈夫と言いながら入らせて、自分も後からついて行ったら確かに痛くて冷たかった。早くお湯を掛けなきゃ。
お風呂のお湯はこれまた熱い。
どこで冷水を入れるのかよく判らなかったし、お風呂を加水したくなかったので、とにかく浴槽のお湯を桶で汲んで足下に掛けた。
熱いけど時間湯に馴れた自分には大したこと無い。
子どもたちにはきついだろうか・・・。
とりあえずお湯を掛けた。
「熱いー」
いっぺんには掛けずに遊ばせながら掛けていく。
バケツリレーみたいにしながらカナもレナも30回ぐらいお湯をかぶっただろうか、いつの間にか馴れてしまったみたいだ。あとはすんなりとお風呂に入った。
湯口からはどんどんお湯が出ているので、あれほど桶ですくったのに減る様子もない。湯量に対して浴槽が小さいのがまたいいんだろう。
結局子どもたちは楽しくお風呂に入って十分温まった。
後でパパはあの凄く熱いお風呂に水も入れずに子どもたちが入ったと聞いて驚いていた。