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晩秋の草津旅行記

9.怖くないと言えば嘘になる






 既に足下に流れてくる湯だけでとんでもなく熱い。
 後から気づいたが、これは源泉を受けるところから直接溢れて流れてくる分で、浴槽内より熱いくらいだ。
 最初に足にお湯を掛ける。
 熱い。熱いけど念入りに掛ける。私は時間湯で足が痛くなるのだから、ここさえ血行をよくしておけば辛さも半減するような気がする。
 次は頭だ。頭に手拭いを乗せて、上から30杯お湯をかぶる。
 不思議とこれをやっているうちに熱くなくなってきた。これなら大丈夫。きっといける。

 顔から滴る湯をタオルでふいていると、副湯長の「支度ができましたらそろそろ下がりましょう」という合図が聞こえた。
 先ほどまでざばざばと出ていた湯口のお湯はとっくに止めてある。
 そうだよね、熱い湯に入ると、ほんのわずかなお湯の動きでも耐え難い。入るときには止めるんだね、うん、ちょっと安心した。

 入るときは熱く感じたが、入ってしまえばまるで熱くなかった。
 ちりちりじりじりとお湯が染み通っていくような気がする。
 普通のお風呂のように体を曲げて入るのではなく、時間湯の作法に乗っ取って深い浴槽で膝の裏や脇を広げると、毎度のことながら体が浮いてしまう。
 ぷかっと浮きそうになると浴槽の縁に乗せた頭がずれる。
 や、やばい。
 このままではぼっちゃんと湯の中に頭から沈んでしまう。
 慌てて手で浴槽に渡された板や縁の下の部分で体を支えて位置修正した。
 それほど熱くない千代の湯ではこんなこともできるけど、地蔵になるとあまりの熱さに体を動かす余裕なんて無くて益々窮地に立たされるんだよな、なんて思った。
 前回、晶ちゃんがアドバイスしてくれたように、頭と足でふんばって浮かないようにしたつもりだけど、やっぱり物理的にそれは無理だ。
 みんなはそんなに浮かないのかな。
 それともやっぱり私の体勢が悪いのかな。
 次回はもうちょっと腰を伸ばしきらず曲げてみよう。

 落ち着いて「オー」の数を数えていたつもりだったけど、副湯長さんの「もうじきです」に、うっかり「ありがたい」ではなく「オー」と答えてしまった。
 隣の浴槽に入っているパパは答えず、一瞬置いてから「・・・違うんじゃない?」とぼそっと言った。
 ええい、意地悪!!
 そういうくらいなら自分でも間髪おかずに大声で「ありがたーい」って言ってよ。
 こっちの出方をうかがってたでしょ。

 「さあ効きましたらそろそろ上がりましょう」という副湯長さんの号令に、お湯から出る。
 本当に熱いときはこの出るときがまた強烈に痛みがあって辛いが、今回の千代の湯では少し弱い痛みが膝下にちりちり来ただけだった。
 副湯長さんがストーブをつけてくれた脱衣所で少し休む。
 でもタオルをかぶって丸くなっていたら、隣の男性用脱衣所からみんなが出ていく気配がして慌ててしまった。
 のんびりしていると置いて行かれちゃう。
 手の甲を見ると、驚くほどしっとりとしている。
 草津の酸性泉に入ったことのある人は判ると思うが、ピーリング効果があるというか、この手の温泉に入ると結構肌は荒れる。肌の表面の保護成分まで持って行かれてしまうような感じ。冬なんて特にそう思う。
 だから昨日、この千代の湯と同じ湯畑源泉の共同浴場、喜美の湯に入ったときも思ったが、肌はすべすべになるというよりむしろ白っぽく粉を吹いてしまった。
 それが時間湯では違う。
 むしろ保湿成分が浸透したように思える。
 お湯の鮮度や湯もみの効果か。それとも温度や特殊な入湯法によるものか。
 同じ源泉でも使い方でこうも違ってくるということが自分の体で実感できる。
 不思議だ。

帰路の風景






2-10再び千代の湯へ続く


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