外に出るとだださんは既に上がっていた。
「待ちました?」
「いや、今出てきたところ」
街灯や旅館の灯りに照らされて、湯畑の湯気がもうもうと上がる様子が見える。
帰りがけに
白旗の湯の源泉も見学した。
「あの木の枠で囲ってあるところが、元々の源泉の場所なんだよ」と、だださんが教えてくれる。
緑色の湯の底からぷくぷくと泡が上ってくる。
表面に辿り着いた泡は水面に何重もの輪を作る。
湯畑とはほんの十数メートル程度しか離れていないのに、白旗源泉と湯畑源泉とそれぞれ違う力を持っている。
今入った白旗の湯は白旗源泉。さっき入った
喜美の湯は湯畑源泉。
色も臭いも手触りや温まり方も少しずつ違っている。
不思議だ。
帰り道、通りかかった
瑠璃の湯の入り口に温度計が下がっていたので、だださんがそれを見て、「氷点下だ」と言った。
さすが草津。
寒い寒い。
湯上がりで体はぽかぽかだけど、首から上はお湯に入っていないから冷える。
どのくらい冷えるかと言うと、帽子から半分出ている耳がちぎれそうなくらい。
帽子をかぶっていないだださんに至っては髪の毛が凍りかけているのか、時々触って確かめている。
氷点下と言えば、水が凍る。
手にした白い温泉タオルが何だかばりばり言っている。
嘘じゃない。タオルのしわになった部分は、持ち上げてもそのまま固まっていた。