というわけでまたまた湯畑前方面へ移動することになった。
もう何回、饅頭屋攻撃のこの道を通れば良いのやら。
何時の間にか青空は消えて灰色の空。
草津のシンボル湯畑前は、朝から観光客で賑やかだ。
晶ちゃんに教えてもらったとおり、湯畑の川下へ向かうと白っぽいビルが建っていた。シゲハラと書かれている。ここの二階にイタリアントマトはある。
青緑の湯畑はいかにも草津温泉という感じで、今やもう見慣れて違和感も無いが、
山本館のある一角や、
千代の湯や大阪屋のある通りを除いて、どうにも様にならない部分がある。
このシゲハラというビルもそうだが、江戸情緒を残す建物と、昭和に入ってから効率のみを重視して建てられたコンクリの無粋な建物がどうやっても相容れないのだ。
せっかく湯畑が温泉情緒を醸し出しても、背景にビルが入るだけでがっかりしてしまう。仕方のないことだが。
イタリアントマトの窓から、晶ちゃんが手を振っているのが見えた。
「カナ、レナ、あそこのお店だよ、キャンプファイヤーの歌のお姉さんが手を振っているのが見える?」
以前、一緒にキャンプをしたとき、晶ちゃんがキャンプファイヤーの余興をいろいろ考えてくれて音頭もとってくれたことがあり、それ以来、子どもたちにとっては彼女は「キャンプファイヤーの歌のお姉さん」になった。
ちなみに、だださんは「キティの神様」と呼ばれている。
彼はキャンプファイヤーで「火の神」の大役を担ったのだが、そのときハローキティのブランケットをマントがわりに纏っていたので、子どもたちにとっては「キティの神様」ということになってしまった。
注文を済ませて席について、やっと一息。
運ばれてきたスパゲッティを食べながら、朝からさんざん走り回って、結局草津でまだ何もしていないことに思い当たりがっくりしてしまった。
こんなことなら何も考えず、さっさと
西の河原露天風呂でも入っちゃえば良かったよ。
晶ちゃんは既に朝の時間湯を終えてきたところだった。
時間湯湯治は一日四回が基本。
もちろん体調に合わせて3回にしたり2回にしたりすることもできる。
彼女は次の時間湯までの空いた時間をこのイタリアントマトでお茶を飲んで過ごそうと思っていたようだ。
晶ちゃんとは数カ月おきにキャンプや温泉に一緒に行っていた。
会う度にじりじりとアトピーが悪い方へ進んでいるんじゃないかと心配になるような痛々しい腕をしていたが、今日会ったとき、はっきりとアトピーの進行が止まってゆっくりとながら改善されているという印象を受けた。
きっと草津の時間湯が彼女に合っているのだ。
毎週毎週草津に通って、一日何回も熱い湯に入るのだから決して辛くないことはないはず。
でも彼女は明るく笑って、じゃまず地蔵の湯に行ってみましょうかと誘ってくれた。