8.その1 凪の湯
まずはベルツ通りを下って、西の河原駐車場のところを右へ曲がる。急坂だ。行きはよいよい帰りはこわい。今はいいけど帰りは湯上がりでぐったり疲れているところ、心臓破りの坂になりそう。
草津の巡回バスで行くことも考えたんだけど、一時間に一本ぐらいしかなくて面倒なので歩き出してしまった。帰りは上り坂だから時間が合ったらバスを使おう。
それからしゃくなげ通りを降りて・・・ああ、この道は知っている。前に
西の河原大露天風呂に行ったときに通った。道沿いにホテルおおるりや草津ホテルがある。江戸時代にタイムスリップしたような草津ホテルの建物の壁は、何だか顔色の悪い人みたいな青白さだ。
道を下りきって西の河原通りに入る。
ここは温泉饅頭屋が並んでいて、食べて行け食べて行けと試食用饅頭を振りかざす。
小心者なので買う予定も無いまんじゅうは試食できない。買うとしても帰り道だ。お風呂巡りに饅頭を持って歩くわけにはいかない。
最初に目指した凪の湯は目立たないところにあった。
消費税サービスだよとひときわ大きな声を上げている饅頭屋の隣に、何やら小径があり、その奥に共同浴場らしい建物が見えた。
いったんは道を行き過ぎたが、極楽館まで来て行き過ぎに気づいた。やっぱりさっきのあれが怪しい。戻って小径にはいると案の定、
凪の湯があった。
共同浴場がどこもこんなに目立たない場所にあるとすれば、もっと詳しい地図を持ってくるべきだったと後悔。
だが、結局一番難易度が高かったのがこの凪の湯だった。他はほとんど道沿いにあって迷わなかった。
ラーメン屋や煎餅屋の看板に従って細い脇道へ入ると、正面が凪の湯。
階段を下りて脱衣所。判りにくい場所のせいか先客は誰もいない。
ここは西の河原 琥珀の池源泉。ひっそりと四角い木製の湯船があり、無色透明の湯が満たされている。
掛け湯をすると、身が引き締まるような熱さ。
こりゃーとても子供は連れてこられないな。
足を入れる。熱い。
飯坂温泉鯖湖湯を思い出すような熱湯だ。
一応横に水のホースはついているが、地元の人はみんなこの熱さで入っているんだろうと思うとおいそれと加水なんかできやしない。
身を沈めるとじんじんとくる。
ほんの僅かに硫黄臭。ざばっと上がると金属臭が立った。
あまりの熱さにあっと言う間に足が赤いまだら模様になってしまった。
湯上がりの肌はさらさらとパウダー系。