子連れ旅行温泉日記

紅葉の温泉を探せ 2-2


2.滝か地獄か惑乱の川原毛


 ドライバーのパパは遠いな~とぼやきながら千秋ライン・鬼首エコロードこと国道108号線を北上する。カーナビは秋の宮で右折するルートではなく湯沢市経由しか表示してくれなかったので、無理やり秋の宮に中継ポイントを置いてルートを変更させた。このとき嫌な予感が胸をよぎった。

 長い鬼首トンネルを抜けて、湯の又温泉への曲がり角の表示が出る。更に行くと鷹の湯、稲住と出て、いつの間にか秋の宮温泉郷を走っていた。この辺りは本当に良さそうな温泉が沢山ある。入浴もできるという秋の宮博物館ぱーと1の前で右に曲がると、山伏岳の峠を目指して道は九十九折の山道になった。
 レナが車酔いするので心配になって後部座席を振り返る。大丈夫、ビデオに気を取られているみたい。しかしこの道、長いなぁ。くねくねしていると予想外に時間が取られる。
 何度目かのカーブの末に、ついに山陰から思わず「おお」と言いたくなるような奇観が現れた。
 どんよりした雲の下、紅葉には少し早い緑の山々の間に、いきなり地獄かはたまた極楽浄土?という殺風景なまるぼうずの真っ白な山があるのだ。あちこちから蒸気が上がっていて、燃え尽きた焼香の白い灰が巨大な山になったようだ。これが川原毛地獄。

 近づくと遊歩道が整備されているのが見える。ちゃんと駐車場もあって、車が何台か停まっている。
 そこでふとおかしなことに気づく。
 ちょっと待て。
 滝つぼの温泉ってどこよ!!?

 これはどう見ても山の上だ。大湯滝は滝というからには山の下にあるはずだ。
 川原毛の上と下に駐車場がそれぞれあって、大湯滝に行くには下の駐車場が便利だというのは知っていた。けれど同じ川原毛というからには、途中で道が二股に分かれていて上と下に行くとか、そういうのを想像していたのだ。どうもこれはそんなレベルでは無さそうだ。
 もう一度地図を見る。
 ガイドブックは東北全体のしか持っていないので、川原毛地獄と川原毛大湯滝はくっついて記載されているが、反対側からも道が通っているようだ。ということはまさか…。

 駐車場前で係りのおばさんがパラソルの準備をしていた。恐る恐る伺う。
 「あのう…滝の下に行くにはどうしたらいいんでしょう」
 「え、滝の下? ああ、戻らなきゃ」
 指差す先は来た道とは逆。
 「こっちから来たんですが」
 「ああ、じゃもっと先、左へ曲がるのよ」
 「時間はどのくらいかかるでしょう」
 「30分くらいかしら」
 さんじゅっぷん~!!
 既にパパはうんざりした顔で待っている。そこへこのニュースを持ち帰らなきゃいけないのか…。あと30分も山道を走ってくれるだろうか。だって30分走れば着くには着くけどそこから更に歩かなきゃいけないし、歩いてもこの気候じゃ入れるかどうかも判らないのだ。とほほ。


川原毛地獄川原毛地獄
川原毛地獄
日本三大霊地のひとつ、川原毛地獄。
江戸時代から昭和41年まで硫黄の採掘現場でもあった。
修行の場でもあったが、今は遊歩道に沿って地獄巡りもできる。

緑の山とのコントラストが凄い。
紅葉の時期は地獄の釜の中のように色づくのだろう。




 背に腹はかえられない。とにかく先を急ぐしかない。
 5分も走ると車は泥湯の温泉街に出た。川原毛大湯滝から泥湯が近いから、帰りにここに入って帰ろうと思っていたが、こうなると全然近くない。
 泥湯は山間に忽然とあらわれた時間が止まった村のような感じで、いい感じに鄙びた旅館が何軒か、ひときわ立派なのは奥山旅館だ。何より驚いたのはそこここに吹き上がる噴気。各々の旅館の周辺から道の両側まで、そこいら中で白い蒸気が上がっている。
 ここに入りたかったなぁ。きっと今回はもう縁が無いだろう。

泥湯温泉
道端で湯煙のあがる泥湯温泉を抜けて…





2-3.ホントに着くのか川原毛大湯滝へ続く


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