おじいさんの話にすっかり捕まってしまったパパを下の湯に残して、やっぱり時間が無いながらも上の湯にも行ってみなくてはと私は移動を開始した。
下の湯で時間が経った分、もしかしたらもう空いているかもと期待したが、やっぱり上の湯の靴の数は変わらなかった。
浴室に入ると、下の湯とはちょっと違った雰囲気だけどやっぱり年季の入った四角い木の浴槽があって、この浴室に不似合いな感じのする若い女の子が四人入っていた。
ゆったり入ると四人でいっぱいぐらいの浴槽だったが、私が来るとみんな少しずつ詰めてくれた。
ここもぬるい。下よりもうちょっとぬるく、体温ジャスト位。
お湯は無色透明だが、アメーバと言うか、透明なとろろ昆布みたいな湯の花の大きいのがいくつも漂っている。
少し入っているといつの間にか体中に細かい泡がびっしりとついていた。
足元からもゆらゆらと泡が浮いてくる。
淡いゆでたまご臭。すべすべする感触。
なんだかここは時間が止まっているようだ。
そう感じたのは私だけじゃなかったみたい。女の子たちは既に30分以上ここに入っていると言っていたが、時計を見て初めて時間の経過に気付いたようだ。
そして最初はぬるいと思っていたのが、いつの間にか温まっていたと不思議そうに言った。
本当に水みたいにぬるいお湯なのに。