駐車場に戻ったのは私の方が先だった。でもほとんど同時。
3時45分。
残り時間はあと2時間15分。
正直なところ、もう鶴を見に行くのは無理だって言われると思ってた。
「間に合うって」
「えっ?」
意外なことにパパはさっきより前向きだった。
「今から出水に鶴を見に行って、それから鹿児島空港に戻って6時、大丈夫だって言っていた」
「誰が?」
「お風呂場のおじいちゃん」
そう、出水の人だというおじいさんが間に合うと太鼓判を押してくれたらしい。地元の人が言うなら間違いなかろう。
そうと決まればもたもたしてないで出発だ。
出水の鶴、これが鹿児島旅行最後のイベントになる。
益々日差しは弱くなってきた。
今頃になって空は晴れている。
出水市は鹿児島の北西部、町の中心部は建物も多いが、ちょっと離れると畑や田んぼが続く。
この町で一番有名なのは10月頃シベリアから渡来する約1万羽のツルたちで、「鹿児島県のツルおよびその渡来地」として国の天然記念物にも指定され、その姿は市内のあちこちの田んぼで普通に見られるが、中でも干拓によって水田となった荒崎地区には市が建設した2階建てのツル観察センターでは快適に観察することができる。