しょうがない。やっぱり下からにしよう。
下の湯は脱衣所と浴室がほぼ繋がっているが、半透明のトタンみたいなもので半分ほど仕切られている。
そして木の浴槽がある浴室とは別に、脱衣所の横に浴槽だけの小さな部屋があり、そちらにもお湯が入っている。
女将さんによるとその小部屋は上がり湯用で熱めの湯が入れてあるとのこと。
それでもぬるければ自分で熱い湯を足して良いとの事。
説明してもらったときに足すお湯も温泉なんですか?と聞くと、蛇口から出るお湯を含めてこの宿に温泉じゃないお湯は無いのよと笑われてしまった。
さてとにかく木の浴槽のお湯に入ってみる。
縁は木で、縁の下は座るに少し深めの木の段があり、底は岩がごろごろ。ちょっと深く、しかも岩の安定感が無い。動く。足を乗せるとバランスを崩しそう。
でも底からお湯が湧いている。
浴槽の隅の方、小さな泡が弱弱しげに上がってくる。
お湯はぬるくてちょうど体温よりわずかに高いぐらい。これは入ろうと思えば何時間でも入れる湯だ。
少しゆでたまご臭がする。
ただし、強い何かを出しているお湯ではなく、ゆるゆるとまとわりつくような、でも逃れられないようなヤバ目の浴感。
すべる感じも少し有り。
天井が繋がっているので男湯からの話し声がよく聞こえる。
饒舌な先客がいらしたようで、鹿児島でもここの湯が最上だとか、twitterはいいよとか、俳句がどうとか聞こえてくる。
あとでパパに聞いたら、出水に住んでいるインターネットが趣味らしいおじいさんで、湯川内に至る道路に直線の坂道があったが、あれは戦争当時、零戦の滑走路として使われていたと教えてくれたそうだ。
零戦は70mあれば飛び立てるので、あの直線は70m超あると。
今回の旅では知覧の特攻平和会館に寄ることはできなかったけど、昨日寄った火乃神公園の戦艦大和率いる第二艦隊の撃沈海域の鎮魂碑や、みどり荘の観音堂など、太平洋戦争の記憶を留める場所がとても多い。
それは戦争が遠い昔の事ではなく、ほんの70年前の現実だったと気付かされる。