ところで何故共同浴場のことを仲居さんに質問したかと言うと、みどり荘に着く前に、パパが道沿いで共同浴場の看板を見たって言うんだ。
ここから坂を下りてすぐだから、徒歩圏なら行ってみようよということに。
念のため受付でちょっと外出してくると伝えようとしてベルを鳴らすと、出てきたのは女将さんじゃなくて食事の時の若い仲居さんだった。
「じゃあ戻られるまで門を開けておきますね」
行ってらっしゃいませと送り出される。
タオル小銭を持った私たちは暗い夜道を歩き始めた。
みどり荘の前の坂道は、車ではあっという間だったが、歩くと少し距離があった。
県道に出ると正面に賑わっている飲み屋があって、パパが看板を見たのは県道を左方面に進んだところだと言う。
左に進むとすぐに駐車場のようにただっ広いスペースに櫓のようなモニュメントがあり、吹上温泉 いざつの湯(吹上温泉の旧名は伊作(いざく)温泉と呼んだらしいが、この文字は「いざつ」と読める)という文字が書かれていた。
「これだよこれ」
「看板は判ったけど・・・共同浴場は?」
「・・・きっとこの近くに」
でもって二人で夜の道をあっちこっち探したけど見つからない。
しょうがないからスマホのマップで検索して・・・
「やっぱりさっきの櫓のところだよ。あそこの手前の細い道を曲がるんだ」
うろうろした結果元の場所に戻って、櫓の奥に建っていた役所みたいな建物の裏手に回り、ようやく共同浴場を見つけた。
そして・・・
日置市営公衆浴場と書かれたそこには、無情にも「本日休業」の札が下がっていた。
ええいもうっ!!
がっかりしながらまた坂道を戻る。
温泉の看板を見つけたら飛びつく私じゃなくて、今回はパパの方がこだわっていて、吹上温泉は吹上温泉郷と言うぐらいだから、他にも近所に温泉施設があるはずと、また途中で道を折れた。
みどり荘に戻る坂道の途中で左折。
灯りも少なくてなんかこわい。
しばらく歩いたら何だか水道局のような小さなローマ遺跡のような白い門があった。
看板も何も見当たらなかったのでそこで引き返した。