本当はこの日、鹿児島市内からも桜島がくっきりと見えたと言う稀な天候だったと後から遮光土偶さんに聞いたのだが、あいにくとそんな日に限って晴れている時間帯、一度も桜島の見えるエリアに移動しなかったのだ。
四日間のうちで桜島を見なかったのはよりにもよってこの日だけだ。
一応、朝、こらんの湯錦江楼の部屋の窓から見えたはずだが、残念ながら朝は海の上に雲が掛かっていてこれまたまったく桜島の影は見えなかった。
次に行こうと思っていたのは知る人ぞ知る開聞温泉。
ここだけは住所も電話番号もよく判らなかった。
でもカーナビを見ると、指宿からさして遠くないところに「開聞温泉」の文字があった。そこでその場所に直接カーソルを置いて目的地設定をした。
到着した開聞温泉は本当に営業しているのか不安になる佇まい。
草ぼうぼうな中に、廃屋チックな建物が建っている。
もちろんB級苦手なパパは入らず、どうぞ入ってきていいよと送り出される。
モルタルの外壁に直接、縦に隷書体風の文字で「開聞温泉」と書かれているのが、何となく千と千尋の神隠しの冒頭場面をイメージさせた。
なんか異世界に繋がっていそう。
ここは温泉よりも手書きの貼紙がやたらめったら貼ってあることで有名らしい。
確かにドアを開けると脱衣所がちょっと狂気じみている。
暗くなってから来たらホラーゲームの一場面のようだ。
入口が男女別で、脱衣所に入るとその中間に受付と言うか番台席があるのだが、そこは無人。
これで浴室にもひと気が無かったら、怖くて入れなかったかもしれない。