建物の外観はだいたい想像していた通り。
いかにも山の宿という感じ。派手な雰囲気は微塵もない。駐車場に車を停めると賢そうな日本犬が一匹様子を見にやってきて、そこへちょうど宿の人の車だろうか、一台停まって女性が下りると、わんちゃんは嬉しそうにその人にくっついてちょこちょこと歩き出した。待ちわびたよと言わんばかり。
ロビーも山小屋風。窓際に木のテーブルとベンチが置いてあるほか、隣室は休憩室になっていてソファーや暇つぶしの本や漫画も置いてある。
日帰り入浴の時の休憩だけでなく、天気が良くないときに連泊しても退屈しないようになっている。
宿泊の場合は受付時に露天風呂の予約ができる。無料で30分間。なお、日帰り入浴の場合も追加料金で利用可能。
「何時に予約する? 夕食の前後?」
「できるだけ早い方がいいよ。明るいうちに入りたい」
「じゃあ4時半で」
主は露天風呂予約票と書かれたボードを取り出し、4時半のところに私たちの名前を記入したが、他はまったく予約が入っていない。今日は空いているのだろう。
部屋もシンプルだけど清潔。置いてあるテレビはかなり小さ目。
障子を開けても窓の外は何が見えるわけでも無い。ちょうどすぐ下が駐車場だからだ。
冷蔵庫は無かったので、持ってきたお茶のペットボトルなどは窓の外の柵の上に置かせてもらった。
何故か洗面台だけが陶器で凝っている。
笑ったのは洗面台の鏡の上部に「タオル掛は頭上にあります」と手書きの紙が貼ってあったこと。どういう意味だろうとそれを読んだパパが数歩後ろに下がって納得した。鴨居と窓枠のところに木の枝みたいな棒が渡してあって、そこにタオルが掛けられるようになっていた。
もちろんこの他に、金属の折り畳み式の普通のタオル掛けも部屋に置いてあったが。